ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
729/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている729ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

第15回佳作マネー」のドルの洪水が小規模の新興市場に野放図に流れ込み、その短期資金はリスクを察知した投資家によってあっという間に引き上げられたために、地球規模の金融危機、さらに深刻な経済危機を引き起こした。そのため、アメリカ型世界経済を推進する米国の指導力と信頼は、いま不気味に揺れ動いている。おりしも、1999年1月1日に発足するEUの新通貨制度の出現で、一段と統合化を進め経済力を強化するEUの台頭は、米国ドルのパワーを相対的に弱めることになり、世界の政治と経済の流動化を今後一層促進すると予想される。まさに、グローバリゼーションの過程で、市場は国家から独立し、全ての主権国家の支配力を弱めさせる方向に進んでいるのだ。21世紀の始まりを目前にした人類社会は、いま経済の効率化と利益追及を目指したグローバリゼーションの潮流に大きく翻弄されている。激しいグローバルな自由競争に勝ち残った企業だけが「現在」という時間の中で取引決済を行い利益を確保できる市場メカニズムのため、蓄積された富は、「弱肉強食、適者生存の論理」の下で配分され、敗者は業界からの撤退を余儀無くされるのが冷酷な現実である。市場の明暗を地球規模ではっきり付けるグローバリゼーションの影の部分を指摘するのはたやすい。たとえば、経済機会と所得の不平等化、人口増加、人口の農村地帯から大都市への無秩序な移動、食料生産と流通手段のアンバランス等々、以前から存在する「南北問題」の一層の深刻化。経済開発優先で増幅する生態系への負荷や環境破壊の地球規摸での深刻化。「現在」の敗者の切り捨てに加えて、市場には本質的に富の歴史的な配分の能力がないため、資源の浪費、環境の破壊、人心の荒廃などの形で、一方的に強いられる「モノ言わない未来世代」の犠牲などである。問題は、グローバリゼーションの影の部分がごく小さな災害を引き起こし、それが複合的・連鎖的に極端な大災害を地球規模で誘発する危機が迫っていることである。事実、地球温暖化の問題、つまりこのまま温暖化が進んで気候が変化してくると、干ばつや極端な高温、台風の巨大化といった災害が大規模かつ頻繁に発生すると識者は警告する。1997年2月20日、毎日新聞社の「21世紀危機警告委員会」が採択した「東京宣言」(#3)727