ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

ある。日本が輸出している製品は技術が汎用性の高いもの、例えばカーナビゲーションシステムのように軍事応用化が可能であるものなどが少なくない。ハイテク機器が一部のいわゆる懸念国の軍事力を大幅に上昇させ得るものであるのならば、主要な輸出国がその技術の転用をも考慮に入れた拡散防止体制を考えなければならないのは必然である。ワッセナーアレンジメントが技術や汎用品の規制をも項目に含めているのはそれへの対応であり、あまり指摘はされていないがその意味で新興工業国、例えばシンガポールなど将来的な技術開発能力を持ち得る国の同レジームへの不参加は長期的な視点で見れば不安要因になるとの見方もできよう。米国が汎用性の高い製品及び技術の輸出に慎重になっている一方でより輸出面での経済効果を重視するようになったことは第3章で述べたが、クリントン政権下のコンピュータの輸出規制に関しても「米国だけが輸出規制を行っても他国が輸出を行えば意味がなく、米国の競争力が落ちるだけだ」との産業界の強い反発に譲歩する形となった。技術先進国で構成される運営委員会が技術の拡散規制を協調して行うことになれば米国の意向に合致したものとなり、新しいレジームの推進力として少なからず寄与できる要因となろう。その意味で今後日本のように兵器は輸出しないが技術面で先進水準にあるという国が新しく運営委員会に参入することは十分考えられ、また歓迎すべきことである。運営委員会での求心力をハイテク技術の拡散防止と技術提携による相互依存に求めるのならば、運営委員会への賛同が期待される他の兵器輸出諸国と委員会の協調はどのような関係に求めればよいのであろうか。上にあげた技術の独占を他の輸出国が通常兵器のNPT化だとみなして反発するのは当然予想され、また妥当な抗議であるとも言える。ワッセナーアレンジメントとよく比較対照されるココム体制を見てみても、冷戦崩壊に伴うレジーム解体以前に米国のワンマン的決定に対する他の参加国の反発が同体制の形骸化につながるとしばしば指摘されてきた。ココムにおいて規制対象の決定が全会一致によるという一見困難な手段が機能してきた背景には、米国による参加国への周到な根回しが行われたことがあげられる。米国が他の参加国の賛同を求める手段として相互防衛援助統制法、718