ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第15回優秀賞その理由を有り体に言えば、胡散臭い出来栄えの兵器がたびたび紛れ込んでいるような「安かろう悪かろう」型の中国製兵器に、今や貧国までもが見向きもしなくなったことがあげられる。かつての輸出大国から転落した中国が運営委員会に加わる意義は何かと問われれば、過去5年間における総輸出量が世界第6位にあたる製造能力のほか、同国が顧客とする地域の国際的な立場があげられる。凋落の理由にあげた前述の状況においてなお、中国は米国の圧力に屈しない数少ない国としてイランやパキスタンの主要な供給国であり続けている。特に、民生・軍事両用が可能な汎用品についての先進国の警戒が強まる趨勢において、1986年に中国は「そのような品目は中国兵器産業において海外市場進出への絶好のチャンスであり、発展途上国への輸出を拡大すべきである」との方針をうちだした。また、安価な中国製の兵器をベースに先進諸国のハイテク装備を取り付け、その精度を増すという工夫が発展途上国ではなされている。パキスタンは200機の中国製戦闘機に米国製の電子機器を装備してその性能をあげ、タイでは4隻の中国製フリゲート艦に米国製のミサイルや英国製のヘリコプターを装備して戦闘能力を向上させた。さらにハイテク兵器が雌雄を決するような大規模な国家侵略戦争と違い、これから多発すると目される小規模な地域紛争はローテクな通常兵器が多用される可能性が最も高い。ワッセナー協約にも参加していない中国が国際的正当性をもつレジームの中核国から締め出されるとどうなるのだろうか。性能に難がありがらも巨大な供給能力を持った国が野に下れば、不当に武器供給を断たれたと思う国が群がるのは当然の理と言え、この構想そのものを根底から覆す要因となりかねない。なぜなら拡散の抑制という大義名分をたてに各国に対し一方的な輸出規制を強いるこの構想は主要武器供給国の協力なくしては全く機能し得ないものだからである。逆に中国が大きく立ち後れている技術の恩恵を受け、運営委員会の意向に沿うよう協力すれば、懸念国に対する規制はより万全のものとなり得るだろう。ここで日本が武器輸出を自粛する方針を一貫して保ってきたにもかかわらず運営委員会の一員として参加する意義のもう一つの側面が見えてくる。それは何度か触れてきたような米国の軍事技術優位政策に表れている、兵器のハイテク化に伴う安全保障体制の変化で717