ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

との反論をし、不安定な地域への輸出をやめる気配はみられない。ハイテク技術で他の主要輸出国に対する競争力をもたない中国が兵器の需要があって経済的効果見込める地域への無差別の輸出を行う傾向は今後も続くと予想される。そしてこのような政策が今後多発すると見られる小規模な地域紛争において重大な影響をもたらす不安は増大する一方だと言えよう。それではここで主要各国の民需産業への転換の可能性について展望する。米国では、クリントンの経済重視政策において、国防総省が投資する科学技術の汎用化や民需転換と再投資のための計画などが93年に発表された。これは軍備削減による失業対策や汎用品開発への支援、民需転換への支援を含んだ5ヶ年計画である。このような政策には冷戦後における軍事縮小という環境変化において生き残りをかけた軍需産業が海外にその市場を拡大し、兵器の氾濫がもたらす不安要因の増加を避け、また軍需産業の一方的な合理化による大量解雇を避けるための政府の真摯な取り組みが表されていると言える。しかしレーガン期において軍事費増大に対応するため産業界は事業の拡大が行われ、その多くが借金による形で行われた。そのため借り入れに対する金利負担は軍事需要の縮小によって深刻な影響を受けることとなった。また過去の民需転換への数多くの失敗は産業界に民需転換への動機をそらすこととなった。結果として、軍需縮小によって産業界は、民需への転換よりも生き残りの方に活路を求めることとなっている。それらに加え、近年民生品の技術が著しく向上したとは言ってもハイテク兵器の開発に関わる特殊な技術を網羅しているわけではなく、ミル・スペックをはじめとするさまざまな規制をクリアするためのコストは未だに膨大である。このような状況を打開するためには、民生品を軍需に応用する際に妨げとなっている規制を可及的に廃止し、民生品が軍需品をも生産できる体制を整えることで余剰な兵器生産を防止し、軍事中心の研究分野の枠を取り払ってより民生品の技術が応用しやすい環境をつくることがあげられている。しかしいずれにせよこれらの環境が機能するまでには産業界の熾烈な生存競争は避けられず、政府の政策実行能力が708