ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

れに協力しなければ自国の競争力が落ちるだけだとの議会の反発があり、他国との協調体制は規制の効果に大きな意味を持っていたのである。これらは対外への米国の規制政策だが、自国においての経済界との関係はどうだったのであろうか。90年代初頭、冷戦終結の防衛予算と過剰な防衛産業研究による民需産業の衰えに対する見直しの必要性が指摘され、軍備削減と防衛産業における130-140万人という大規模なリストラが見積もられた。冷戦期に共産圏という明確な敵の存在によって不本意ながらも輸出規制に従ってきた軍需産業は今度は熾烈な生き残り競争に直面し、内需の減少に伴い対外への規制緩和を一斉に叫びはじめたのである。さらに輸出規制に反発したのは防衛産業界だけにとどまらない。冷戦期においてハイテク兵器の開発には膨大な政府予算がかけられ、それが民生品に応用されるという主従関係があったが、経済や技術のグローバル化にともなう民生品の急速な技術革新はその関係を逆転させ、軍民両方に応用できうる汎用品という分野を産み出した。例えば画像強調チューブ、赤外線焦点照準素子、慣性航法装置、ジャイロスコープ、振動加速度計などである。冷戦期においてココム諸国との協調を図るために複雑化した法体系が79年に輸出管理法として総括されたが、冷戦後の状況変化にともない大幅な内容の改正が必要とされ、これらの汎用品の扱いについてブッシュ大統領と上院、下院との問で意見が対立した。輸出拡大を目指す産業界の意向を反映した下院と、ハイテク技術の世界拡散がもたらす米国の安全保障に対する脅威を懸念する上院が激しく対立し、国内においても産業界と安全保障の両立の難しさを露呈する形となったのである。クリントン政権期に入って、米国の輸出規制政策は懸念国に対する規制を強めながらも貿易に関する経済効果をより重視する傾向となった。これは防衛産業基盤を維持しながらもスーパーコンピュータの大幅な輸出規制緩和に踏み切ったことなどに表れている。議会でも米国の一方的な自粛規制に対する不満がつのり、他国間の規制体制をめざす大統領に対して劇的な規制緩和を求める声が強くなった。そのような攻めぎあいの中でようやく発表された通常兵器移転規制政策では、「米軍の技術的優位を維持すること;先端兵器技術704