ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第15回優秀賞に見出すかということであった。冷戦期において、米国は共産圏への兵器の流出を食い止め、また核保有において圧倒的に東側の有利にあった欧州の東西陣営の力の均衡を保つために東側に対する輸出規制を強化する一方で西側諸国への武器援助を優先的に行った。これはココムにおける自国のリーダーシップを保つために加盟国に対する武器援助という形を取った外交目的の要素も強いものであった。1970年代から1980年代にかけては兵器輸出がしだいに経済的な要素を強めたものになっていく。特に経済力を増してきた中東では米国の石油利権を確保する外交目的の対象であると同時にその支払能力による同地域での市場の拡大は米国の経済的動機をより強めた。ジョージ・ブッシュが政権についた89年頃から冷戦の終結は決定的になり、東欧の民主化などに対応して徐々に軍備の輸出規制を緩和していった。その一方で米国は湾岸戦争により中東への通常兵器の規制の必要性と、米国のハイテク兵器の圧勝という結果から逆にそれらの技術が第三国へ流出することの危険性をはっきりと認識したのである。湾岸危機が起こる直前に旧ソ連やフランス製の先端兵器が大量にイラクに流入していた他にも、米国からレーダーやオシロスコープなどの技術が購入されていた。イラン封じとして政治的、経済的な優遇を与えていたイラクが、米国から与えられた軍事情報によって米国の偵察衛星の目を逃れたのは皮肉な結果であったと言える。米国はココム時代に規制する対象となっていた旧ソ連や東欧諸国に歩み寄り、西側技術の輸入を促すとともにそのような懸念国への輸出規制体制を確立するために支援を約束した。ブッシュ大統領はP5にも呼びかけ湾岸に対する共通の認識を固めるべく努力したが、各論段階において各国の意見が分かれP5での交渉は失敗に終わった。中国の非協力に加え、米国がイラクと並び石油権益の軸としていたサウジアラビアに対して交渉と同時進行で先端兵器を輸出していた背景もあり、交渉の決裂も無理もなかったと言える。米国が中東の中でも特に警戒していたイランに対しても、欧州や日本は重要な貿易相手国であるという要素もあり、米国の価値観には他国は容易に賛同できなかった。米国にとっては自国だけが輸出を規制しても他国がそ703