ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
668/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている668ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

4.『反合理主義的自由主義』に向けての国連の役割『反合理主義的自由主義』はアダム・スミス、ハイエクら偉大な経済学者によって唱えられた自由主義である。まず、合理主義的思想群と決定的に異なるのは、人間の認知力と理性を限定的なものとして把握し、人間を非合理的で利己的欲望によって誤りやすい存在であるとする点、伝統や慣習など自然発生的で不合理的なものを重視し、そういった非設計主義的なものに依拠する最低限の一般的ルールと非強制的制度によって自由市場の調和をはかるという点にある。現在のグローバル金融市場を見れば実感として理解できるだろうが、人間とは、反合理的存在、利己的欲望によって衝き動かされる存在であるから、それを個人の人間理性が設計したり予見したりすることは出来ず、予測外のことを往々にして成し遂げる。ハイエクの言う通り、スミスの制度的な問題関心は、人間が時折成しえる善なる奇跡に対してというよりも、人間が最も悪いときに害悪をなす機会をいかに制度的に最小にするかということにある。何の制度もなしに『見えざる手』が機能するなどとはスミスは言っていない。その制度は操作する人間や全ての人間が善いか悪いかには依存せず、不合理的人間の多様性をそのままに上手く機能する、恣意的でない一般的な制度である。スミス、ハイエクら市場主義や自由主義の真の理解者達が繰り返し叫んできたことは、無政府的完全自由市場主義とは全く相反するようなこと、つまり利己的人間同士は利害衝突をおこすが故に、「あるグループの意見と利害が常に他の全てのグループのそれを圧倒するような力をどのグループにも与えることなしに、相争う利害を和解させるような制度」や、利己的な「諸動機から、他の全ての人々の必要にできるだけ多く貢献するように誘引されうるような一揃いの制度」を設ける必要があるということである。そしてまた、そのような制度は、制限無く排他的で強制的な権力制度であってはならないということである。もちろん、人間が反合理的で全知の存在でない限り、市場のアクターに自由が与えられるには、アクターが決定権を持つ責任領域を定める一般的規則を設けて、権力制度に制限を加えることも必要なのだが、それは同時にアクターにリスクを自己責任において被ってもらうことも意味し666