ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

リカの多民族・カオス的社会内での多文化的内部分裂を防ぐためのボナパルティズム的再引締めを狙ったものなのであろう。3.グローバリズム・イデオロギーの原理2(合理性)現状のグローバリズムのイデオロギー的基盤は、東大教授の姜尚中によるものが分かりやすい。それは、「市場経済が国内と国際とを問わず、諸資源を公正に、また効率的に配分してくれる『見えざる手』として働くはずであり、その合理的な作動を妨げる経済外的な障壁を排除すれば、万事うまくいくはずだという世俗的なユートピア(注3、下線は小島)」であると言えるだろう。無論、「世俗的なユートピア」を表す言説である以上、姜尚中は巧みにも多くの世俗的誤謬をこれに意図的に含ませている。世俗的ユートピア市場主義者は、グローバル市場主義の原理は、「合理的な作動」によるものであり、経済外的規制を撤廃すれば『見えざる手』がうまく諸資源を公正に効率的に分配すべく作用すると言うのである。しかし、多くの典型的な世俗的グローバル市場主義者が盛んに引用する『見えざる手』とは、現実のグローバリズム・イデオロギーを構成している原理ではない。少なくともアダム・スミス的意味での有効な市場原理の『見えざる手』とは、「合理的な作動」とイコールではない。世俗的ユートピア主義者は、そうであるにもかかわらず、合理主義に立って現状のグローバル市場主義を両手を挙げて賛同している。前章で述べたような、グローバリズムに対峙させられる原子化された個人、という現状のグローバリズムが引き起こした図式を是認する世俗的ユートピア市場主義者の思想そのものが、デカルト的合理主義、つまり人間を非社会的、自給自足的存在とする「偽の個人主義」(ハイエク)4の妄信を前提としていることは自明である。現状の国際金融市場を覆うイデオロギーとしてのグローバリズムが「合理的な作動」を基礎としているのは、経済的リバタリアニズム(完全自由市場主義)の勃興に典型に示されている。その市場の自律的完全秩序への信仰は、市場の最小基礎たる人間は生来合理的存在であるという性善説的前提によっている。「善なる者は正理平治なり」(『荀子』性悪6624F・A・ハイエク「真の個人主義と偽の個人主義」『ハイエク全集3』春秋社、『市場・知識・自由』ミネルヴァ書房。