ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第9回優秀賞有効な兵器をロシアは全廃したのに対し、アメリカは半分残している。エリツィンはアメリカがロシアの優位に立つことを認め、ロシアをアメリカの風下に入れることを決定したのだ。冷戦の結果、ほぼすべての主要国家はアメリカ主導の民主主義体制に組みこまれたことがこれで明らかになったのである1。[C]軍事アメリカの圧倒的軍事力による支配で、当分の間世界に第一次、二次世界大戦規模の長期、かつ広域に及ぶ戦争が起こる恐れはほぼ消えたといっていい。冷戦の間、局地戦争にはソ連、アメリカ両国とも異なった勢力を援助することによって相手を牽制したが、一方では危機管理を行い、泥沼化、全面戦争を避けていた。しかし、冷戦の終局と共に社会主義諸国の支配体制の弱体化、大国の圧力の消滅が起こったので、世界各地で小規模の戦闘が起こり始めたのも事実である。主に民族間、宗教間の対立から始まったそれらの紛争はゲリラによる市街戦、無差別攻撃が多く、非戦闘員の犠牲や大量の難民発生に繋がりやすい。そして収拾が非常に難しいため、第三国が介入しても逆に事態が悪化する恐れがある。当事者以外には関係が無いように見える内戦も、隣国にとっては難民が流入したり、戦火が飛ぶ恐れもある脅威なのだ。ソ連の崩壊は他にも新たな問題を引き起こした。技術の面ではアメリカと共に最高を誇るソ連製軍備の世界流出である。財政赤字に悩む旧ソ連共和国はメンテナンスに多額の金がかかる武器を他国に売り渡し始めている。ブッシュ大統領の軍縮コールとは裏腹に、中東の産油国を始めとする諸国が大幅な軍備拡張を開始したので買い手は非常に多いのだ。さらに通常兵器だけでなく、核兵器の拡散は専らの噂である。核兵器は全てロシアが管理するというのが発表され、余分の廃棄が行われているということだ。しかし、多数の核科学者が第三国に雇われ、核兵器の開発に従事しているとよく聞かれる。核の拡散によって、抑止力としてのみ使われていた核兵器がその本来の性能を発揮することもあり得るし、核テロリスト出現の可能性も存在する。1仲晃の国際政治セミナー月刊政経塾1992年8月号56頁、ワシントンポスト1992年6月21日社説。63