ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
625/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている625ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回佳作しようとする姿勢を指す。具体例として、湾岸戦争をとりあげよう。安保理の決議を積み重ねるという合意形成プロセスを含んでいたという意味では、湾岸戦争は「ルールによるアプローチ」によって解決されたと言うこともできる。しかし、武力行使容認がほとんど無限定的なままに決議されたという意味では、秩序を乱す侵略者に対しては何をしてもかまわないという「正義によるアプローチ」の側面、さらには、一時的な感情によって振り回される「感情によるアプローチ」の側面を色濃く有していたようにも思われる。いくら合意形成がルールに基づいて行われたからといって、形成された合意に何らかのルールがほどこされるのでなければ、最終的には国際社会を分裂させ、安保理決議の信頼性や正統性を失わせるような事態になりかねない。したがって日本は安保理の武力容認にあたって、必要な限定を付するように要求していくべきである。また、安保理改革とはすこし外れるが「ルールのアプローチ」の確立という意味では、戦時国際法の整備を進めていく努力も必要だろう。特に、内政干渉にあたるということで、内戦に関する国際法上の規定は一九四九年のジュネーブ四条約の中の「内乱条項」くらいしか存在していないが、これだけLICが頻発している現状ではなんらかの形で戦時国際法による戦争の人道化が必要である。ただしそれは、戦争手段を禁止すれば事足りるという話とは全く違う。赤十字国際委員会がよく用いる「戦時法規は、軍事的必要性と人道的配慮のバランスの上に成り立つ」という言葉があるが、人道主義の観点だけを重視して、戦争の必要性を全く無視して戦争法をつくっても、結局その法は守られることはないだろう22。秩序革新の原理としての内乱をなにほどか認めつつ、不必要な人命や財産の損傷を防いでいく規定が必要となろうが、同時にこれが過剰な内乱を喚起するようなシグナルにならないような工夫も必要だろう。安保理をめぐる情報の流れについても日本が主張すべきことは多い。よく言われるのは、安保理の議論の過程が不透明であること、あるいは冷戦後安保理がクラブ化してしまい、舞台裏での根回し段階で事実上の決定が行われていることへの批判である。加盟国全体を22香西茂等『国際法概説』(有斐閣)283-285頁。623