ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

ニズムを構築すべきだろう。20」トーバルは具体的な処方として、平和創造に複数の国家が必要な紛争について、大国の外交政策メカニズムを活性化させ、問題への関心を向けさせる、紛争勢力の意図や紛争防止のためのアプローチについての様々な議論を大国に伝える、妥結を促進する概念や代替案を提示する等を挙げている。このような役割を安保理が果たしていけるよう、大国にとって政略上重要でない地域の紛争についてもグローバルに解決すべきアジェンダに加えていくことを可能にするような仕組み(例えば付属の情報収集・分析スタッフの充実等)について日本は積極的に構想していかねばならないし、自身も情報提供者、アジェンダセッターとしての役割を果たしていかねばならない。トーバルの言にあるように、国家と国連の役割分担の入れ替えこそが、現在最も必要とされる最も抜本的な改革なのであり、日本は改革のコンセプトから具体的な機構までを積極的に構想・提案していくことでそのような改革を主導していくべきだろう。また、冷戦後、大国間の協調によって拒否権の行使が激減し、特にLICに関連した安保理決議が急増しているが、「ないよりまし」といった手軽さで実効性のない決議を増やして安保理決議の信頼性を失わせかねない傾向には注意を喚起すべきだろう。4 PKOについて紛争処理の関連で付言しておくと、PKOについては強制活動を伴わない平和維持活動の有効性を評価し、伝統的なPKO活動に限定していくよう主張すべきであり、PKOと平和強制活動の混同には警告を発しなければならない。日本が安保理改革について発言すべき第二の領域は「ルールのアプローチ」の確立に関わるものである。「ルールのアプローチ」は、「正義のアプローチ」と対義的な概念として村上泰亮等によって提出された概念である21。「ルールのアプローチ」は、個々の文化的共同体(natio)だの、共約可能性を探り、共通のルールを追求していく姿勢である。言ってみれば異質性は異質性としてみとめつつも、その異質性の理解を目指していこうとする立場である。そこでは寛容が必要不可欠の資質として要求されるだろう。対して「正義のアプローチ」は、すべての文化共同体のもつ世界イメージを普遍的正義に従わせて等質化62220トーバル前掲論文83-84頁。21以下の記述は、村上前掲書下巻241-253頁による。また、中曽根等『共同研究冷戦以後』(文芸春秋社)65-69頁も参照した。鴨武彦も『国際安全保障の構想』(岩波書店)の中で「ルールオブゲーム」への移行を主張しているが、その中身は必ずしも分明ではない。