ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

法的な正統性を備えた制度化を行うことが必要だということである。そこで次章では、現代における脅威とは何かを明確にし、それらに対する安保理や国連の対応の適否を実行可能性や正統性といった観点から検討することにしよう。Ⅲ.紛争の多様化と国連現在、経済安全保障や環境安全保障、人間の安全保障というように安全保障概念が拡張されているが、ここでは「国際の平和と安全」への脅威を武力紛争に絞って論じていくことにしたい。国連が第二次世界大戦の勝者によって創設されたとき、その具体的な標的は、敗者たる枢軸国の際侵略の防止にあった。長らく死文化してきたとは言え、敵国条項の存在はその端的な証明であろう。このような目的が現代にそぐわないものになっていることは言うまでもない10。ただし、国連創設後、枢軸国の再侵略のみならず大国間の戦争が生じていないことは事実として確認しておく必要がある。もちろんその直接の原因は国連の外にある。その一つは(是非はおくとして)核兵器の登場がもたらした抑止効果である。もう一つは東西対立によって創り出されたNATOやワルシャワ機構、日米安全保障同盟等の安全保障同盟に主要国が組み込まれ、東西間のみならず同盟内の戦争が抑制されたことである11。しかし、国連が大国間紛争の抑制に全く寄与しなかったかというとそうではないだろう。拒否権という形で不同意を明確に示す場として安保理が存在したことによって、紛争が非武装化したという側面もあるのではないか。結果論にすぎないが、国際連合の創設以降大国間紛争が起こっていないという事実はもっと評価、検討されてよい。しかし言うまでもなく、国連創設後も大国間でない国家間の紛争や侵略活動は頻発した。憲章の関心は大国間にとどまらない大規模な国家侵略全般を防止することにおかれていたが、拒否権の応酬によって憲章に想定されるような強制行動がとられることはなかった。その意味では、湾岸戦争の結末が、冷戦の終結による集団安全保障の現実化への漠然とした期待に確固としたイメージを与えることになったのも当然だろう。周知の通り、湾岸戦61610冷戦の終結を「戦後」として捉え、勝者としての西側による世界秩序構築を主張する向きもあるが、日独の常任理事国入りを肯定するロジックとして以外さして意味をもつ主張とは思われない。11軍事同盟が持つ同盟内の紛争抑止効果については、土山實男「日米同盟の国際政治理論」『国際政治』(有斐閣)115号を参照のこと。同論文175頁では「NATOはソ連に力で対抗した面はあるが、英国はフランスとの、そして英仏はドイツとの関係調整にNATOを使ってきたのである」と述べられている。