ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

その第一は、理事国のメンバーシップ改革という視点によるものである。日独の常任理事国入りに止まらず、分担金/地理的配分/加盟国数との比例(国連発足時から加盟国数は約3.7倍になっているが、理事国数は1.3倍にしか増えていない)/南北間配分などの観点から、メンバーの不均衡が指摘されている。全理事国を総会で民主的な選挙によって2~3年毎に改選する、というユニークな案もある。第二に、投票の仕組み=拒否権の再考という視点での改革案が存在する。現行の安保理は、大国に拒否権という特権を与えることによって、大国の離反を防ぎ、世界の平和への責任を担わせることを企図したシステムである。国連では国際連盟の失敗を教訓として、五大国を不動の指導国に位置づけた安保理に平和回復の実効権を与える「指導された民主政2」を採用した。しかし、冷戦期に拒否権は乱発されて安保理の機能不全の直接の原因となり、また主権平等の見地からも多くの批判が寄せられてきた。この視点は第一の視点とも絡んでおり、常任理事国を追加する場合、拒否権を与えるかどうかが焦点となっている。より根本的な改革案として、現行の常任理事国を含め拒否権を廃止/制限(例えば2か国の拒否があってはじめて拒否権が機能する等)することを主張する国もある。が、全常任理事国が拒否権廃止に賛同するとは考えにくく、拒否権廃止の実現は困難とされている。第三の改革の視点は、第二の視点とも関連するが、安保理への過度の集権化に焦点をあてるものである。常任理事国は、全加盟国を拘束する司法的・立法的・執行的行為3をなしえ、しかも拒否権ゆえに自らはその権力行為の客体とはならない。最上敏樹が指摘するとおり、このことは法の下の平等という原則に反するものであり、国連は「法の支配」を欠いた社会ではないかという疑念を免れ得ないことになる4。こうした集権化を防止するべく、安保理=立法権、事務総長=行政権、国際司法裁判所=司法権というように三権を分立させ、相互監視させる、総会を強化してその決議が安保理の決議と同様の権限を持つようにさせる、安保理の優位は認めるにしても総会への特別報告を頻繁に行うようにする等、の提案がなされている。第14回佳作2村上泰亮『反古典の政治経済学』(中央公論社)下245頁。3具体的には、侵略者を特定する権限(39、40条)、どのような強制措置をとるか決定する権限(41、42、48、49条)加盟国が安保理の決定を受諾することへの同意(25条)等の権限をさす。4最上敏樹『国連システムを超えて』(岩波書店)86-87頁。613