ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

外れであることも主張しなければならない筈であった。日本政府は世界の地域状況を公平に把握して、国際的な発言をすることが求められているのである。海外派兵の問題については、国連憲章そのものは常任理事国が紛争地に兵力を派兵する義務を規定してはいない。だから日本が安保理常任理事国となっても、必ず海外派兵を求められるものではないとする見方もある。しかし、常任理事国は軍事参謀委員会に参謀を送り、国連軍の戦略的指導の責任を負わねばならない。そういう責任をどう遂行するのか、充分な議論と明確な方針なしに、常任理事国になることは危険である。すでに総会の場で言明しているが、むしろ日本は平和主義の理念を打ち出して、平和憲法を持つわが国は派兵ができないことを鮮明にすべきである。その上で、日本が安全保障のために協力できることを具体案として提案するしかない。そういう形を国連が受け入れることができるか否かは国連の問題である。国連の場で日本が軍備縮小を率先して主張し、平和的紛争解決の立場を世界的に鮮明にすれば、武力対立で行き詰まった紛争に対して、自ずと日本の調停を期待するケースも出てくる可能性があると考えられる。常任理事国として日本が果たす役割は、現在の安保理事国以外の国の意見を聞き、理事会に反映させることである。しかし日本はどの国にも追随することなく、情勢の充分な理解のもとに公正な立場を貫かねばならない。それこそが軍事力を持たない日本が世界の信頼を得る方策であると思う。社会経済開発のための協力アメリカが期待するものは安保理に対する財政負担と軍事力である。エレクトロニクス産業で開発されたハイテク技術の軍事的使用も目的としているであろう。しかし世界が日本に期待しているところはそういうものではなく、むしろ社会開発のための高度な産業技術や金融力である。世界第二の国内総生産高と貿易量を持つ日本が、今までに蓄積してきたこの分野の経験と実績こそが、日本が世界に貢献することのできる領域である。現実的な観点からして、経済・社会の分野こそ、日本が実力を持ち世界に貢献できる領608