ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回佳作のような情勢から、この安保理の改革がまじめに議論されることになった。すでに1968年の総会において日本は、国連創設以来はじめての提案「安保理の構成と表決手続きに関する再検討」を提出した。そして1970年代半ばには、インドの国連代表が「国際政治における1945年以来の権力のパターンの変化から見て、常任理事国の構成は国連憲章の責任遂行の能力を欠いている」と指摘して、改革案を提示した。1980年代末の冷戦体制の流動化とともに安保理改正の声は一層高くなり、1990年9月、非同盟諸国首脳会議でインドネシアは「世界の平和と安定に経済力がますます重要な役割を果たしている。いまや安全保障の概念は軍事力ばかりでなく、経済的、社会的な側面も重視される点を考慮すべきである」と発言し、改革を促した。こういう改革要求は1992年12月の国連総会でようやく検討が採択され、1993年7月には各国の提出した改革案「安保理の衡平配分と拡大」がまとめられた。各種の改革案が出されているが、大勢としては現在五カ国の常任理事国に日本とドイツを加えて七カ国とし、現在10カ国の非常任理事国に、地理的バランスを考慮して3カ国程度を加えるという案に集約されていくものと見られる。しかし各国の思惑が錯綜して、目標の1995年(国連創設50周年)にも結論を出すに至らなかった。最も問題となっているのが常任理事国が持つ拒否権である。東西冷戦時には、戦争当事国であるメンバーが拒否権を出動して、国連活動を麻痺させる事態が頻発した。本来、紛争当事国は決議を棄権することを憲章は規定している。大国が自らの利益のための国際社会のシナリオを描くような安保理は問題であり、国連民主化のために拒否権の廃止が必要であるという主張は、今までからしばしば持ち上がっており、今その制度場の問題に結論が出されなければならない。日本が常任理事国となることは、日本の国際社会における発言を強化することになり、望ましい事ではある。しかし、それによって生じる義務、なかんずく日本の海外派兵と武力行使に対する平和憲法上の制限と国民感情など、国としても国連としても充分検討しなければならない問題がある。日本は、そのうえで、常任理事国として何をやるのかという603