ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回優秀賞「世界新秩序」形成へ向けて「世界新秩序」は現在、形成途上の状態にある。よって、現在の時点ではその明確なアウトラインは掴めないものの、本レポートのⅡで行った3つの分析によっておぼろげながらもその姿を呈することになった。それによると、「世界新秩序」においては普遍的なイデオロギー(自由主義的民主制・市場経済)がシステムを覆い、そのことによって、各国に共通認識が生まれ、これが協調を促進する。協調は「世界新秩序」維持の重要なファクターであるので、保たれることが望ましい。つまり、この因果関係を解き明かすと、「新世界秩序」維持のためには、普遍的なイデオロギーの浸透が欠かせないのである。ところで、日本は現在、経済大国であり、世界的にも豊かな国の一つであるが、これは、今の世界が自由主義経済を促進させるブレトン=ウッズ体制を採用しているから成立している、と言えよう。もし、保護主義経済が世界を覆うイデオロギーであったならば、日本に現在享受しているような繁栄は望めまい。また、戦争違法化という状況も日本の繁栄を可能ならしめるファクターとなっている。日本は資源の希少な国なので、先天的に、現在の戦争の主流である全体戦争には弱い。よって、戦争を極力抑えようとしている国際社会の努力が日本の繁栄にとってプラスに働いているのである。以上のことにより、日本の現在の繁栄を継続させるためには自由主義市場経済、そして戦争のない平和な国際社会が保たれることが必要条件であることがわかるだろう。もちろん、「世界新秩序」においても、日本は自国の繁栄の必要条件を守らなければならない。具体的に言うならば、「世界新秩序」における普遍的イデオロギーを擁護・広めなければならないのである。自由主義経済は市場経済のイデオロギーを浸透させることによって、国際社会の平和は自由主義的民主制のイデオロギーを浸透させることによって達成される37。また、普遍的イデオロギーの浸透は先に見たように、「世界新秩序」維持にも役立つ。よって、日本は国際貢献という面からも積極的に普遍的イデオロギーの擁護・伝播に努めるべきなのである。更に言うと、日本はこのような普遍的イデオロギーの擁護・伝播に加えて、相対的な得意分野(経済分野)において国際公共財を提供すべきである。具体的に言うと、37 「民主主義国同士は戦わない」というテーゼ(マイケル・ドイルの実証研究に基づく)より、民主主義国が広まれば、戦争発生の蓋然性が低下し、それによって国際社会に平和がもたらされやすくなる。571