ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

は軍事的なものに限らず、そこでは平和維持・非挑発的防衛などの包括的なものとなる。具体的には、CSCE、ASEANがこのシステムを体現していると考えられるが、このシステムが協調的安全保障と呼ばれるものである。3.「世界新秩序」に対応した安全保障システム以上、安全保障の8類型を挙げた訳であるが、これら8類型の中で、「世界新秩序」に最も適したものはどの類型なのであろうか。ここでは、それについて考えていく。Ⅲ-1で述べたように、「世界新秩序」における脅威は、不特定で、システム内部に潜在的に存在する、という性質を持つ。よって、安全保障システムの類型としては、D(d1, d2)が適当そうだ、ということがまず分かる。また、「世界新秩序」においては、軍事的な手段のみならず非軍事的な手段も重要視されることから、脅威に対して包括的な手段をとるd2の方がより望ましい、とされることが次に分かる。以上のことにより、「世界新秩序」に最もよく対応した安全保障システムは協調的安全保障システムである、ということができる。4.協調的安全保障システム形成・維持の条件ここまでの議論で、「世界新秩序」における安全保障を達成するためには、協調的安全保障システムの構築が必要不可欠である、ということがわかったが、それでは、このような協調的安全保障システムが構築・維持にはどのような条件が必要なのであろうか。ここでは、その条件について言及する。「ポスト覇権システム」の特徴をもつ「世界新秩序」においてはどの分野にもあてはまることであるが、協調的安全保障システムが維持されるためには、各国、特に大国26の協調と利害の調整、が必要不可欠である。ここで、大国、と強調したのは、政治・安全保障分野は他の分野と比較して、大国の発言や行動がシステム自身に与える影響が大きいからである。これは、国連の安全保障理事会の構成が変化しない限り続く特徴であると思われる。このような大国の協調と利害の調整を可能にするためには、大国の間に共通の価値観が存在する必要がある。このような価値観は、「世界新秩序」においては、自由主義的民主主義、そして市場経済ということになるのであろう。56426大国とは、大きなパワーを持つ極となるような国家を指すが、政治・安全保障分野における大国とは一般的にP5(安全保障理事会常任理事国)を指すことが多い。