ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回優秀賞脅威-対処のタイプに即した安全保障システムの類型まず、A(a1, a2)に目を向けてみる。この安全保障システムは特定の脅威が自らの陣営の外部に存在すると考えられていた冷戦期においてよく取られたものである。a1はNATO,WTO(ワルシャワ条約機構)など軍事力を用いて抑止・対抗をはかる同盟型の安全保障システムであり、a2はCOCOMなど包括的な手段を用いて抑止・対抗をはかるものである。次に、C(c1, c2)に目を移す。この類型に入るシステムは、Aの安全保障システムが生み出す戦争の危険性を減少させるために出現したシステムである。c1の危機管理システムでは、基本的にはお互いが自分の利益のみを追求し、一方的な行動をとるが、意図せず戦争が起こるのを避けるために敵対関係を安定させ、ひいては緊張緩和や軍縮を達成しようという意図が働く。具体例としてはA. Georgeの言う「危機管理」24やR. Osgoodの言う「GRID」25が挙げられる。それに対して、c2では戦争が起こる危険性を友敵双方の様々な協力によって減少させることを試みる。1960年代の初頭に設置された米ソのホットライン、SALTなどが実際の例として挙げられる。b1は、冷戦後のNATOや日米安全保障同盟などに見られるように、域外の不特定で分散した脅威に軍事的に対処しようとするものである。また、b2は、様々な方面から域外の不特定な脅威に対処しようとするものである。具体的には、潜在的な軍事的脅威である軍事的な技術流出を防ごうとする新COCOMやMTCRが挙げられる。このような、脅威を外部化して対処しようという試みに対し、D(d1, d2)では、脅威を内部化して対処する方法が採られる。d1の集団安全保障システムにおいては、複数の国家より成る集団内のどの国であれ侵略をおこした場合は、他の全ての国々が協力して、侵略国に対して軍事的な制裁を行うこととなっている。それに対し、d2では、不特定の分散した脅威を内部化し、それが顕在的な脅威や武力衝突にならぬよう予防することを心がけ、それが不幸にも実際の紛争へと発展した場合でも、平和裏に解決するよう努力する、もしくはあらかじめ被害を最小限にとどめることを図る枠組みをつくろうとするものである。そして、その時に採られる手段24 Alexander George,(ed.)“Avoiding War”, Boulder. CO: Westview Press, 1991.25 Charles E. Osgood,“An Alternative to War or Surrender”, Urbana: University of Illinois Press, 1962.563