ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回優秀賞極であった冷戦時代のようにその構造内に明確な脅威が存在しない。つまり、分散化された、不特定で潜在的な脅威がシステム内に存在するのである。また、「世界新秩序」においては、相互依存が非常に深化している。よって、そのような脅威に対する対抗手段としては、軍事的な対抗手段のみを用いていたのでは、金銭的な面でも効果の面でも満足のいかないものとなる。よって、対抗手段としては、非軍事的な対抗手段(政治・外交を通した戦争の予防など)が非常に重要なものとなる。安全保障システムの基底概念上で述べたとおり、「世界新秩序」における脅威は、分散化された、不特定で潜在的なものである。よって、脅威を安全保障のシステムの中に取り込み、その主要目的を戦争の予防・紛争の平和解決とすることが必要となるのだが、そのためには脅しというよりもむしろ説得力を安全保障システムの第一の基底概念とすることが必要となってくる。各国の行動原理覇権国の存在しない「世界新秩序」において秩序を維持するためにはどうしても各国の協調と利害の調整が必要となってくる。安全保障の面においてもこの点は発揮される。冷戦期においては、各国は自己の陣営内部においては協力するが、外部からの特定の敵(つまり脅威)に対しては、互いにユニラテラルな行動をとっていた。これに対して、「世界新秩序」においては、分散化し不特定な脅威に対抗するために各国は協調を余儀なくされる。言ってみれば、外部の敵が存在しないために全体が冷戦期で言う内部に相当することになったという訳である。以上のことより「世界新秩序」における政治・安全保障の状況は次の4点にまとめることができる。1脅威の不特定化、分散化、及び潜在化2軍事的な手段のみならず非軍事的な手段の重視3脅威を内部に取り込むためのシステム構築の必要性4全体的な協調行動原理の発現561