ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

況になるまでの過渡期に世界システムはどうなるのであろうか、という疑問も湧いてくる。彼らはこのような問いにもきちんと回答している。その回答の一つとして、以下、田中明彦の「3つの圏域論」について説明する。3つの圏域論<概念図>20図8-1 3つの圏域のモデル市場経済の成熟・安定第1圏域(新中世圏)第2圏域(近代圏)経済の停滞・混乱第3圏域(混沌圏)政治無秩序自由民主主義の成熟・安定「新しい中世」的な世界システムが登場するまでの過渡期の世界システムは、「新しい中世」における普遍的なイデオロギー(自由主義的民主制と市場経済)の浸透度合いによって3つの圏域に分けられる。もちろん、その圏域の区別は厳密なものではなく、相対的なものである。以下、3つの圏域の特徴を述べると、第一圏域(新中世圏)は最も「新しい中世」度が高い圏域である、ということができる。つまり、自由主義的民主制・市場経済が成熟・安定した状況にあり、圏域内での相互依存度がきわめて高い。そのために摩擦も多く、紛争も頻繁に発生するが、戦争のリスクが高く、圏域内の諸国は民主主義国同士なので、軍事的な対決となることはありえない。よって、この圏域においては、脅し21というよりもむしろ、説得力22の重要性がかなり大きい。第二圏域(近代圏)においては、自由主義的民主制・市場経済が部分的に浸透している。そのために、この圏域に含まれる諸国の様相は非常に異なっている(例えば、自由主義的55820田中明彦「新しい中世」194頁。21脅しとは、「ムチ」の行使である(田中明彦「「終焉論」を越えて」『外交フォーラム』1991年1月号)具体的に言うと、軍事力の行使や経済制裁がこれに当たる。22説得とは自らの望むことが相手にとっても利益になるということを理解させることによって相手の行動を変えるという方法である。(同上)