ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

側発展途上国との間には南北問題を生じさせた。そして東西冷戦終結後この傾向は一層顕著になり、北米自由貿易協定や東アジア経済協議体構想、EC統合構想にみられるような軍事的ブロックに変わる経済的ブロック形成の動きが活性化し、国境を越えた地域的な保護主義、排他主義の傾向が強まりつつある。こういう状況からみても、世界は軍事的戦争の時代から経済的戦争の時代へと移行してきたと言えるであろう。殊に先進工業国と開発途上国の経済格差は一向に改善されず、累積債務が増大するばかりである。第2次世界体戦後、列強の植民地支配下に置かれていたアジア、アフリカ地域は、非同盟運動にみられるように反植民地主義、民族自決主義を掲げ、次々と政治的独立を達成したかに見えた。しかし新たに形成された国家は政治秩序、権力構造の確立がなされていないために社会基盤が脆弱であり、従って経済的発展を望めず、結局旧支配国に経済、技術、教育等あらゆる面で依存し続けなければならなかったのである。そして援助や開発という名のもとに先進国の従属関係に組み込まれ、政治的独立も名目化してしまうという植民地時代と何等変わらない状況下に置かれているのである。1970年代に入ると、こうした第三世界と呼ばれる開発途上国は、一国一票という国連総会における数の上での優勢を利用し、北側先進諸国に開発援助や貿易の拡大を要求するだけに留まらず、天然資源に対する恒久主権や経済主権の確立を国連の場を通じて主張するようになった。即ち、従来の格差是正を重点とした政策から、先進国が構築した発展途上国を従属化するような経済、社会システム自体の改革を目指し始めたのである。このことは1973年のOPEC(石油輸出国機構)とアラブ石油輸出国との連携によるオイルショックによって、南側諸国の有する天然資源が北側先進国の技術力と工業力に経済的な権力基盤として十分に対抗し得るものであることがあきらかにされ、それまで南側諸国に対して圧倒的優位に立っていた先進国の地位が、揺らぎ始めたことに大きく起因していると言えるであろう。国連は、このように南側諸国の北側諸国に対する団体交渉の場として大きな役割を果し54