ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回優秀賞その理由としては、まず第一に、近代世界システムにおいては主体は国家のみであったのに対して、将来においては中世と同様、多様な主体が世界システムに登場し、そのことによって主体間の関係はきわめて複雑なものになるから、ということが挙げられている。つまり、将来の世界システムにおいては、国家だけでなく、非国家主体(政府間国際組織・NGO 19)が世界システムの重要な主体として活躍すると予測されるが、これは中世の世界システムにおいて、教皇・皇帝・都市・大学などの主体が複雑な関係を保ちつつ共存していたことと非常によく似ているのである。次に、第二の理由として近代世界システムにおいては、常にイデオロギーの対立状況が見られたが、将来の世界システムにおいては中世の世界システムと同様に普遍的なイデオロギーが世界システム全体を覆うであろう、ということが挙げられている。つまり、近代世界システムにおいては自由主義的民主制が常に対抗イデオロギー(19世紀においては正統主義、20世紀初頭においてはファシズム、20世紀においてはマルクス・レーニン主義)の攻撃を受けてきたが、将来の世界システムにおいては、自由主義的民主制・市場経済といった普遍的なイデオロギーがシステム大に広がる。これは、キリスト教というイデオロギーがシステム大に普遍的に広がった中世の状況と非常によく似ている、というのである。以上の理由から、新中世主義者は、将来の世界システムは中世の世界システムと似たものとなる、と結論づける訳であるが、もちろん、相違点があることも認める。その相違点は、経済相互依存状況と他の世界システムの存在の有無ということに顕著に表れる。具体的に述べると、中世の世界システムにおける経済相互依存状況と比較すると格段に将来の世界システムの経済相互依存の方が進展している、という点、そして、中世の世界システムはその外に他の世界システム(具体的には中華帝国・イスラム帝国・ビザンチン帝国)を擁していたが、将来の世界システムはそのような他の世界システムを持たないという点が挙げられる。このように、新中世主義者は将来の世界システムが「新しい中世」的なものになるであろう、と予測するのであるが、この時点で、近代世界システムから「新しい中世」的な状19 NGO(Non Governmental Organization:非政府組織)には、NPO(Non Profit Organization:非利益団体)と多国籍企業が含まれる。557