ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

かし、このシナリオでは、パワーの内容を「軍事力・経済力・トランスナショナルな分野における力」と単純に分けて分析しており、非常に粗削りな議論に終始している、という批判もできうる。そこで、次にナイの議論を一歩進める試みをしたいと思う。<モデルの図示>冷戦期:二極新世界秩序:第一人者型*参考単極モデル多極モデル一般的によく言われる通り、冷戦とは、米ソという二極の対立であった。つまり、世界システムは、圧倒的に他を凌駕するパワーを保持する二極(米ソ)と二極のパワーには全体のパワーを集結して対応しても勝ち得ないその他の国々によって成っていた。それに対して、「冷戦後」つまり、「世界新秩序」の時代においては、この冷戦が終了したのであるから、その世界システムの状態は、決して二極ではない。すなわち、単純もしくは多極の状態なのである。そこで、具体的に考えてみると、まず、単極の可能性はありえない。なぜなら、単極であるアメリカが全ての国のパワーを威圧するほどのパワーを持っているとは考えにくいからである。これは、ナイの議論に中にも出てきたように、経済的状況・地球規模問題群の出現といった現在の世界の状況より明らかである。次に、多極の可能性について考えてみると、ナイが示していたとおり、現在は、多極を構成する国家のパワーが均衡している状況にはない。アメリカが、多極の中でも「第一人者」的に大きなパワーを保持している状況にある。すなわち、アメリカに全ての国のパワーを威圧するほどのパワーはないが、アメリカと多極を構成する他の一国とのパワーを比較した場合、必ずアメリカのパワーが優位にある、というような状況なのである。これは、アメリカが国際機関などを通して国際秩序安定のための自国の負担を軽減しようとしている一方で、いまだに世界552