ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回優秀賞(2)「多極化」のシナリオ19世紀のヨーロッパに見られたバランス・オブ・パワーによる秩序維持と同様、世界秩序がアメリカ、ロシア、中国、ヨーロッパ、日本の5つの極のバランスによって維持されるというシナリオ。ナイは、これら5つの極の持つパワーの性格が異なる5ために安定した力の均衡はもたらされないという見解をとっている。(3)「3つないし2つの経済ブロック」シナリオ6これは、経済・金融分野におけるパワーを重視した見方である。ここでいう3つのブロックとは北米と西半球を包括するアメリカ圏(ドルブロック)、東アジアを中心とする日本圏(円ブロック)、ヨーロッパを中心とするヨーロッパ圏(ECUブロック)をさし、2つのブロックとは、日米が共同で支える太平洋圏とEUを中心とするヨーロッパ圏を指す。ナイは、このようなシナリオは、現実に起こっている国際的相互依存深化の流れに反する保護主義的なものであるし、安全保障上の考慮を全く行っていないので不適切である、としている。(4)「単極の覇権」シナリオ7旧ソ連の崩壊とともにアメリカのパワーが抜きんでたものとなり、アメリカが真の覇権8国となる、というシナリオ。ナイは、一国では解決しえないトランスナショナルな問題が存在し、経済的には、日本・ヨーロッパがかなりのパワーを持った今、アメリカ一国の覇権はありえない、としてこのシナリオを却下している。(5)「適度な相互依存」のシナリオ軍事分野においては、アメリカの一極、経済分野は三極(アメリカ、日本、EU)、トランスナショナルな相互依存の発達した分野9では、パワーが拡散している、とするシナリオ。ナイは、これを「新世界秩序」を表わす最も適切なシナリオである、と位置づけた。以上のナイの5つのシナリオは冷戦後まだそれほど時期の経っていないときに出された予測であるが、1997年の現在より振り返ってみると、5つのシナリオの中ではナイの主張する(5)のシナリオが最も適切に「世界新秩序」を表現しているように思われる。し5例えば、日本は経済分野におけるパワーは大きいが、軍事分野におけるパワーはそれほどでもない、これに対してロシアは軍事分野におけるパワーは大きいが、経済分野におけるパワーはそれほどでもない、また、アメリカは、軍事分野においても経済分野においても大きいパワーを持つ。6 Jacques Attaliらがこの考えをとっている。7 Charles Krauthammerらがこの考えをとっている。8例としては、麻薬貿易・エイズ・テロ・環境問題・人権などが挙げられよう。9恐らく、人権・環境などの分野がこれにあてはまるのであろう。551