ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回優秀賞近代世界システムとは、「近代主権国家をその最も重要な構成要素とする非主体型の世界システムで、経済的には資本主義的な一つの分業体制に統合されている世界システム1」のことを指す。ここで重要なことは、まず第一に、近代世界システムは、内に対しては排他的な支配権を持ち、外に対しては平等な地位を持つ(つまり他の国家との関係が平等である)主権国家を重要な構成要素としている、ということである。つまり、国際社会においては、主権国家より上位の主体が存在しないのである。第二に重要なことは、システムそれ自体が一つの主体(国家)ではない「非主体型」の形式を取っている2、ということである。つまり、世界システムは、集権的な「世界帝国」のようなものではなく、様々な主権国家より成る分権的なシステムなのである。そして、第三に重要なことは、近代世界システムにおいては、システム大に資本主義経済が広がっている、ということである。つまり、市場での売買を前提とした利潤最大化型の生産がシステム大に広がっており、その分業のあり方で、システムが中心-準周辺-周辺に分かれているのである。ここでの中心とは、その時代の先端産業が集中し、高い生産性・労働賃金を誇る地域を、周辺とは一時産品に特化し、低い生産性・低賃金で特徴づけられる地域を指す。準周辺とは中心と周辺の中間の状態にある地域を指す。以上のような特徴を持つ近代世界システムが、「世界新秩序」の前提となっている訳であるが、「世界新秩序」はこの近代世界システムがどのように変化したものであるのか。以下、そのことについて述べていく。2.分析の方法近代世界システムの変化を分析する方法としては、1静態分析、2動態分析(循環論)、3動態分析(趨勢論)の3つが存在する。1の静態分析とは、近代世界システムの歴史を通して一貫して当てはまる傾向は存在するのか、もし存在するとすればその傾向とはいかなるものなのか、ということについて中心的に見る分析である。ここで重要なのは、パワーの分布がどうなっているのか、という構造的な要因である。1の静態分析の対照的な概念としては、2・3に挙げた動態分析が挙げられる。これは、1田中明彦「世界システム」22頁。2この「非主体型世界システム」は「主体型世界システム」の対極概念である。「主体型世界システム」とは、それ自身がそのまま国家である(それ自身が一個の主体である)世界システムのことを指す。ウォーラーステインなどはこのタイプを「世界帝国」と呼んでいる。例としては、ローマ帝国・中華帝国などが挙げられる。549