ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回最優秀賞理事国の一員になることは、自衛隊ならぬ他国の軍隊に武力行使を求める結果ともなりうるのであり、これは広義の武力行使として位置づけておく必要があるのではなかろうか。従って、この点からは、橋本首相の「武力の行使は行わない」という意思表明が単なる意思表明で終わってしまうと、将来に禍根を残すことになるであろう。安保理を改組する際の条件として、日本の憲法に伴う自衛隊の行動上の制約を、あらかじめどのような形で具体化しておくのかが重要になってくる。例えば、「日本は、憲章第7条が定める軍事的強制措置には関与せず、決議にも参加しないが、安保理の要請があれば、PKO法の範囲内における自衛隊の行動についてはこれを行うことができる」という条件を国際社会が容認するならば、従来の形で自衛隊の活動は存続できるわけであり、この範囲であれば、日本の世論も安保理入りを支持するであろうが、国際社会は到底このような独善的にも見える条件を容認しないであろう。また、国連が日本のこのような形での安保理入りを容認するような場合があるとすれば、それは拒否権の見直しを含めて安保理組織と決議方式についての大幅な改革が断行された場合に限られるであろう。であれば、次善の策として日本のとるべき道は、準常任理事国ないし拒否権をもたぬ常任理事国を目指すことではなかろうか。これとて安保理組織の大幅な改革を必要とすることになるが、こちらの方が現実性を帯びた議論が可能な選択肢であるように思われる。現在、こうした日本の安保理入りに伴う様々な制約について、果たして政府の国際社会へのアピールは十分であろうか。仮に、この点を曖昧なままに、いたずらに常任理事国入りを急ぐことになれば、国内に混乱を引き起こし、国際社会の日本への失望を招くことになるのは必定であろう。さらに、武力行使の面では上のような制約を伴うとはいえ、安保理において日本がひたすら消極的であっては、そもそも日本が安保理入りする理由はなくなるのである。武力行使の点を除き、日本は積極的に世界平和実現のために活動する国家でなくてはなるまい。国際社会における平和と秩序を維持する上で日本に特に要請されるのは次のような点ではなかろうか。国連を通じての日本型の貢献策を考える上で、次のケースは参考となるであろう。1992515