ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回最優秀賞ている紛争は湾岸戦争にみられるような典型的な主権国家による主権国家に対する侵略行為と理解されるようなものが少なく、専門家がLIC(低強度紛争)と呼ぶ、一国内の民族対立や宗教的対立に根ざしたものがほとんどである。すなわちブッシュ大統領はこのような紛争の解決に向けてもアメリカがヘゲモニーを握っていくのだと決意表明したわけであるが、これが必ずしもアメリカの思惑どおりにいっていないことは、世界各地のPKO活動の膠着ぶりをみれば一目瞭然である。今日の国際社会が、ますます多元化(多極化)の構造を深めつつあることは明らかであり、日本の国際貢献が国際社会の中で真に有意義なものとなるか否かは、まさにこの点についての配慮が十分になされるか否かにかかってくると思われる。こうした新しい国際秩序においては、軍事大国が力の論理で世界をリードするような状況は次第に改められ、ここに国際貢献の面で日本が活路を見いだすことはできないであろうか。「地球化時代の国際政治経済」(賀来弓月1991年中公新書)では、新国際秩序を模索する時代にあって、日本が国際社会の中で何らかの意義ある取り組みをなしうるのではないかと、私たちにある種の希望を与える考察がなされている。ここに引用してみる。「将来の世界秩序の姿は不確実だとはいえ、冷戦秩序を形成した核戦争の脅威が世界秩序全体を支配する可能性は非常に小さいだろう。新しく誕生しつつある世界秩序の中では、国家とその領土をパワー・センターとする企業が連合を組みながら、グローバル経済を舞台にして、他の国家と企業の連合を相手に激しく競争する時代だろう。世界秩序の裏側を張り合わせ支えるのは軍事戦略的なものではなくて、ますます政治経済的な戦略(ポリティカル・エコノミーの戦略)になっていくだろう。他方、グローバル経済の繁栄から相対的に取り残されがちな周辺部の世界(東アジアなどを除く第三世界)では、地域秩序を自己管理する関係国の能力に問題があって、国家間に地域紛争が発生する可能性は高い。」筆者は、第三世界のこうした状況は、貧困や人口増加などの問題と相まって、紛争状態を容易に招来する傾向を生むであろうから、ここに国連をはじめとする国際社会の協力ないしは介入の必要性が生じるはずだ、と考えるのである。511