ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回最優秀賞のである。日本の戦後史において、特に対外的交渉を通じて、ライシャワー氏のいう日本人の思想面における大胆さと柔軟さは遺憾なく発揮できたといえるであろうか。私は否定的に考えている。「冷戦後の世界と日本」(財団法人フォーリン・プレスセンター編1990年ジャパン・タイムズ)は次のようにいう。「政治的に問題のある政権を相手にした商売でも、『民間企業』がやっている限り政府は口出しできないしそのつもりもない、とは日本政府がことあるごとに使ってきた言い訳だが、外交面である程度の信頼を勝ち得ようと思うなら、そんな言い訳はもはや通用しない。この点、日本はまだ大人になりきっていない。日本の目標というのは、世界中のどの国民も経済的な利益と政治的な自由を獲得できるような政治的成長を保証するため、思いやりもあり経済力もある世界の大国となることである。」ことほど左様に、経済力の肥大ぶりとは裏腹に、日本の政治力は(従って外交能力も)国際社会においてはきわめて貧弱であるというのが通り相場であり、そのことは日本人の深い自信喪失につながっていると思われるが、その原因とは何だろうか。「55年体制」が1993年まで38年間も続いた中で、日本の野党勢力(ないし革新勢力)は、結果論ではあるが、一度も政権を獲得できなかった。これらの勢力に支配的であった社会主義的イデオロギーに基づいた活動があらゆる点において無意味であったというような短兵急な議論をするべきではあるまい。戦後50余年の間、東西冷戦構造の中で、日本がまがりなりにも平和国家としてやってきた(これを「平和的伝統」と安直に自賛してよいかは別として)ことには、これらの勢力が一定の役割を果たしてきたことを率直に評価しないわけにはゆくまい。しかし、「われわれこそが国際社会の圧力の中で日本の軍事面での免責性を勝ち取ってきたのであり、また、憲法の、とりわけ第9条の存在を諸外国に知らしめ、また、国内的にはこの規定を護ってきたのである」というような自負心に対しては、これらの勢力がイデオロギーによりかかりつつ時の政権の一挙手一投足を批判することのみ専念するという悪しき習癖を身にまとい、憲法が標榜する「国際協調主義」とは509