ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第12回佳作このような横暴な国家の誤まった権力行使を抑止し、人類の共益の生産、創造の連帯によって包みこみ、葬る力を国連に集中していく努力をいますぐ始めなければならない。このため、個人やグループ、ボランティアの善意、極めて微小な力を大きく膨らませてゆける組織、制度をつくってゆかなければならない。世界の三分の二が飢えているという。平和を論ずる場合も、その底にある貧困問題にまで目を注がないと片手落ちである。紛争の大きな要因は貧困だ。南北問題が叫ばれて既に久しいが、飢え苦しみ、唯一性と一回性の「ペルソナ」の命が日々失われている。貧困を克服するためには、生産力の培養と社会的・政治的安定を図らなければならない。このためには経済的援助はもちろん、人的な援助など多面的で組織的な援助が必要となってくる。この場合、単にナショナル・インタレストではなく、人類共生のための共益の創造という理念がなければ、ネオ植民地的な政策に陥る危険性があることに注意しなければならない。国連が主導し、経済社会理事会や信託統治理事会を中心に、付属専門機関を有効に使って経済や社会の建設を図り、南北の較差(格差)是正に努めなければならない。学校をつくり、民力を高め、それぞれの国の自治能力、統治能力を高めていくべきである。国大学は開発国の経済・社会開発のための研究を援助するとともに、人材の育成にも努め、優秀な国際公務員を関係国に「開発行政アドバイザー」として派遣したり、国際復興開発協会国際開発協会などを充実させて「開発基金」を設け、システマティックな開発援助と取り組むべきだ。貧困を克服しないかぎり、紛争の危険から開放されることができない。争いごとには民族や宗教など複雑な要因が絡んでいるが、貧しさも大きな要因である。平和の構築には、燃えあがった火を消し止める力の保持も大切であるが、予め危険な要素を察して、防止する「平和のための予防活動」も必要だ。国連の専門官を広く駐在させ、国連活動を強める「国連アタッシェ」の制度も提案したい。415