ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

な国際組織へ昇華させてゆくデザインをいま描くべきである。この過程で組織のもつ傲慢さ、凶暴性、排他性を取り除き、国家のもつ暴力装置の爆発を防ぎ、国家のエゴイズム、国家悪を内部的にも外部的にも薄め、人類共生の理念へ止揚してゆくことが必要である。その中では「人類の共生」「人権」「一回性の生命」がキー・ワードとなろう。当面、国連が相当のエネルギーを注がなければならないのは、紛争の処理のほか、核兵器の軍備管理と貧困、飢えの克服であると思える。核不拡散条約(NPT)、つまり核増殖防止条約が一九六八年七月に、米ソ英の核保三ヵ国と非核保有の五十三ヵ国の間で調印された。七〇年三月に発効した軍備管理の多国間条約である。その後、わが国をはじめ、フランス、中国の核保有二ヵ国などが加盟し、九四年九月現在、加盟国は百六十四ヵ国に達している。国際原子力機関(IAEA)の通常査察、特別査察などによって、独自に核開発・核保有を試みる野望が白日のもとにさらされて阻止された。この条約は核廃絶への理想からはまだまだ遠い。現状の厳しい状況を踏まえた認識に基づいてようやくまとめあげた苦心苦渋の選択であることがよく分かるが、条約には明らかに自己矛盾を包含している。つまり既に保有している核大国の核兵器を合法化し、非核保有国との間の差別を固定するものであるからだ。非核保有国には核エネルギーの平和利用を核兵器あるいは核爆発装置に転換することを禁止し、その履行についての保障措置協定(SA)のIAEA(国際原子力機関)との締結を非核保有国のみに義務づけている。これでは核開発への“衝動”を阻止するための正当性を留保することもできなければ、他との優位性保持に血まなこになる国家の生理、エゴイズムを抑止できない。中国が中国領土内とはいえ核実験を行い、フランスがムルロア環礁で再開しようとしている核実験の動き(平成7年9月3日現在)に対して、グリーン・ピースやその他の市民グループ、自治体などが抗議行動を展開しているのも、核大国のエゴイズム、横暴を「拒否」し、矛盾に異議をとなえる、草の根の健全な市民・大衆の反応として評価したい。414