ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
409/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている409ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

第12回佳作「国連機能をいかにして強めるか-第49回国連総会・ガリ事務総長提案を踏まえて-」中村佐????一.ガリ提案の意味するもの国家が揺らいでいる。冷戦構造が崩れ、恐怖のイデオロギー対立のくびきから解き放れた歓喜は一時的な至福にすぎなかった。急速に失われた国家の求心力は、自由を求め、願望の実現に向かう強烈な遠心力に引っ張られて、バランス・オブ・パワーが一気に崩れてきている。そして宗教や民族に根ざした対立のエネルギーが噴出して、血みどろの闘争が起こっている。解体国家の惨状は、国民の生命・財産を守るどころか、奪いあい、傷つけあう無法を許す存在にすぎなくなっている。確かに国家を超えて、地域連合として新たな「カッコ」によるくくりを求める動きもある。EU(欧州連合)の試みは、トランスナショナル、主権の共有化を予感させるに十分である。しかし国家の背骨もまだまだ強固である。外的世界に向かって、強がりを見せ、他国より優位性を保ちたいという欲望は思いのほか根強い。中国の核実験、フランスの栄光を守ろうとする核実験再開の動き、核開発をめぐる北朝鮮など諸国の動きなど、国家の生理・心理をあからさまにみせる例は枚挙にいとまがない。世界各地で起こる紛争、戦禍。新しい国際秩序を形成できない混迷の国際社会のなかで次々と上がる「火の手」を消そうと、ガリ事務総長は「平和執行」の概念のもと、国連の軍事的力の行使を試みたが、主権国家内部の当事者能力や国連の非力等々のゆえに失敗した。この反省と現実認識に基づいて提出されたのが第四十九回国連総会での年次報告である。国連平和維持活動(PKO)重視から、経済・社会開発に力点を置くものであり、紛争を未然に防ぐ予防平和構想ともいえるし、安全・平和創造の基盤(ファンタメンタルズ)を固めようという考えともいえる。407