ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

ろ新レジームとの機能的な連繁を基盤とする視点から考えたとしたならばどう写るのかを見ていこうと思う。3.二極体制の冷戦期にあっては日米関係は「対ソ」封じ込めで依存を相互に深めていった。その相互の依存を可能にしたのが言うまでもなく「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」(通称、日米安全保障条約)である。国際情勢が大きく変わった現在でもなお同条約の存在異議を唱える論者は日米ともに多いのであるが、そもそも同条約下の体制、日米安保体制にはどのような意議があったのかをまず軽く確認する必要がある。まず第一に、同条約は東アジアの国際的な安全保障システムの一環をなしていることである。米国の対アジア政策は軸と幅(hub and spoke)であって、米韓・米台・米比などの二国間の安全保障と共に日米安保条約もその一つの軸をなしているのである。第二には、日米安保条約は軍事同盟であるとともに相互協力の条約でもあり、それは日米関係のそもそもの土台となっているという点である。安保体制が存在しない状況であればさらに日米経済摩擦は深刻化していたと考えられている。第三に冷戦後も日本の防衛にとっては米国の協力は不可欠な条件となっている点である。「国防の基本方針」に拠り、現平和憲法下での専守防衛に日本の防衛政策の基本がある限り、安保体制に日本は依存せざるを得ないからである。非核三原則を日本が国際社会の中で高唱できるのも同体制の中に日本は身を置いているからである。だが、同条約の最大の日本の対アジアアピールはそもそもの日本の軍事大国化、とりわけ核大国化の意図がない主旨を伝える点にあり、22アジア諸国の日本に対する懸念を和らげるところに同条約の意議があった。この日米関係の基盤ともなってきた同条約体制が現国際情勢において揺さぶられるシナリオとして以下の三点が指摘されている。23第一のシナリオはアジア・太平洋地域から米軍事力の撤退が進み、日本の自衛隊の攻撃力を中心とした防衛力に弾みがつく場合である。第二が日米の経済摩擦の深刻化が両国に39822日本の核武装化を警告するものとして最近注目されたものにK.ウォルツ「日本は核武装する」『諸君』94’4月号に翻訳がある。23阪中友久「日米安保体制の将来」宮里政玄編『アメリカの多元的変化と日本』同文館1993年。