ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

国連における意思決定には莫大な時間を要し然るべき決定がなされないこともしばしばある。その点からみても議事運営は非能率的であるといわざるを得ない。しかし、この意思決定においても国際連盟の時代に国家主権をより尊重するかたちで採用されていた全会一致制と比べ、討論を重視したうえで最終決定を行うことが民主主義の真意であるとの理解から国際連合の意思決定方式である多数決制へと変化を遂げた。それ以後、意思決定の幾分かは効率的になったであろうが、依然物事の「決定」に至るまでは遠い。それは当然のことであろう。物事に対する捉え方が多種多様になり、国連といえども国際法上の一般原則である「国家は平等の主権を有し、国内事項に対して干渉されない」といった条項を遵守する義務があるからだ。こうみてみると国連は意思決定を下すには大規模な組織であり、大規模であるが故に果たし得る役割には限界があるといわざるを得ない。そこで台頭するのが国民国家の枠組みを超えた「超国家的組織」としての地域的国際機構の役割と国連との連携である。国際的規模を持ち合わせた問題のなかにおいても地域的性格を含むものも多く、地理的要因からも経済面のみの統合ではなく社会・文化・政治といった多方面での協調が可能だからである。その上、アジアなどを例に挙げると分かるように、たとえ価値観が多様化していても共通した経済発展(雁行型経済や輸入代替型から輸出代替型への変化など)や同じ利害関係のもとで協調することは可能となる。また東南アジア諸国連合においても東南アジア全域を非核兵器地帯とし、「東南アジア非核地帯条約」の草案に取り掛かっていることなど、同じ状況を抱える国同志の関わり合いは共通認識をもち、地理的要因の類似性を土壌としているためまとまりやすい。国連憲章五二条-五四条の地域取極においても「国連の目的及び原則を一致する」限りにおいて地域的機関の有効性を認め地域的機関を利用することも認めている。これらの点からも国連と地域的国際機関との連携は可能であると考えられる。一方で世界のブロック化や閉鎖性を生み出す元である地域主義に対する懸念もある。しかし先にも述べたように、国際的規模の問題に対して地域的性格を含むものも多いことや共通認識や利害関係が生まれる土壌を無視することはできないこと。また国連との連携か360