ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

受けていないものにとってそれが通用しないこともあるのだと認識しておく必要がある。だからこそソフト面での開発が求められ、我々も状況を識別する目を磨くことを求められているのである。ある会社が開発途上国に向け、粉ミルクの販売を手懸けた。それを境に栄養失調の子や乳児死亡率が激増したのである。水で溶かれたミルクは安全とはいえなかった。字が読めない、ましてや衛生観念のない親にとって、生水を沸騰するといった知識や哺乳瓶を消毒するといった知識は皆無である。生活に対する無知・知識の欠如がこのような不幸を招いたのである。また栄養の概念がなく、食生活が不安定なため、こどもの発育段階において学習能力が低下しているといった現実にもぶちあたる。これらの問題は貧困であるが故に起きた悲劇なのである。多くの途上国においてこのような悪循環はいまだ大きな問題を残している。*自助努力情報や交通が発達するにつれモノ・ヒト・カネの交流が活発になり、国家間の関わりもより緊密になった。国境を超えて相互に依存する社会が構築されてきた。しかし依然、国家の問題は自国解決を図るべきであり、NGOをはじめとした諸団体・組織はその手助けをするにとどまる。でなければ善意の協力や援助が先の粉ミルクの例に準じた結果になりかねない。繰り返しになるがだからこそ今、援助のソフト面の必要性が問われているのである。悪循環を断ち切るためには、貧困の撲滅のためにはどうすべきか、それを共に検討するのである。これが「共生」への第一歩なのである。あるNGOの活動のなかで労働生産性の低い第一次産品の効率を高めるためにはどうすべきかを検討した際、試行錯誤の末、「量」でなく「質」の高いものの栽培を手懸けることにした。そして、現在では、無農薬野菜の栽培に着手することによって効率化を計っている。またある団体は、現地で共に労働に着手し、使用している製品が壊れた際、独自で直すことが出来るような体制作りをしているという。このような働きの積み重ねが貧困の撲滅や開発へのステップに役立ち、悪循環から抜け出す手立てとなっているのである。358