ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

敗を繰り返さないために、いつかは乗り越えねばならない試金石である。3.国家連合から人間連合へガリ事務総長は、1994年第49回総会に提出した年次報告書「平和と開発の構築」においては、平和・安全・民主主義、開発などの世界的な諸問題の克服には、国連が総合的かつ一体的な戦略に基づいて対処し、これまでとは異なった解決方法を求めねばならないと指摘し、そのために「平和への課題」や「開発への課題」に沿った具体的対応を提唱している。これは、同氏の特論である「これまでは希望を持つことが重要であったが、今やその理念を現実に達成することが求められている。宣言を発したり、立場を明確にしたりするだけでなく、理念そのものを具体的な行動計画のなかに実現させていかなければならないのである。・・・」(Foreign Affairs,1992)という信念の現れであるものと理解しうる。こうした意欲的な試みは、結果として必ずしも成功例ばかりとは言えないものの、国連に対する世界の信認を得るために重要な挑戦であり、国連を次世紀の世界システムの中心に据えるために貴重な経験となった。確かに国連が、実質的な世界平和維持機構としての役割を果たしていくには、まだまだ多くの課題が山積していることは否めない。されど最もその可能性を持った機構であることも、また事実であろう。それは、国際の平和と安全を維持し、もって民主主義と個人の自由、並びに法による支配を基調とする世界を現出するには、共通の運営機関を必要とすることは明白であるからである。そして、新たな世界システムにおいて、各国万民から信認される形で、人類の連帯感に基づく平和維持機構としての国連をその頂点に置くことである。これは、特定の覇権国の傘のもとでの平和ではなく、「国際協調による平和」こそが選択可能な唯一の道標であるということが、これまでの人類史のなかで既に証明済の命題と思われるが故である。すなわち国連の存在価値は、人類全体によって享有されるべき普遍的価値に基づくもの342