ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第12回最優秀賞しかし、ポスト冷戦時代に入り世界の連帯の枠組みが、いよいよ国連を単一軸として形成されることが期待される段になりながら、これにバランスする脅威の存在が曖昧で、直接的な目に見える危機感が乏しくなったこともあり、加盟各国間の利己主義が一段と表面化している。勿論、だからといって地球的規模の脅威が存在しなくなったという訳ではない。人類全体を地上から抹殺するのに要する量の何倍もの弾薬・兵器が現存しており、フランスや中国の核実験等は続けられているし、或いは、自らの民族・宗教や経済的利害に狂信的な余りに、国際社会ルールや人道的価値基準と相容れない行動を取る集団、たとえばイラク大統領やカルト教団などからの挑戦を受ける、というような危惧も完全に払拭されたとは未だ言えない。そうした危険の存在にも拘らず、現状の国連が加盟各国の協調を強化する方向に機能しているとは言えず、むしろ昨今のPKO活動等の対応を巡り幻滅や批判が広がり、求心力が失われつつあるというのが実情である。それは、各国の国益レベルでの判断からは現状の国連の存在が世界秩序の担い手になりうるとは認識していないし、また、それほど大きな存在になってほしくないという思惑が反映された結果かもしれない。だが、競争システムの枠組みをみると、その舞台は確実に地球規模に拡大されている。世界全体の動向に左右されることなく、一国家・一地域だけで繁栄を謳歌することはもはや不可能なことであるし、情報ネットの発達は閉ざされた範囲での自己満足的な小世界という錯覚・幻想の成立もほぼ有りえないものとしてしまっている。現在では、まるで競争こそが世界を規定する唯一のシステムであるかのように見える。つまり、いかに生産能力を高め消費条件を良くするかという原理に、全ての価値や秩序が支配されつつあるかの如くお互いを意識し、影響を及ぼし合っている。このように競争範囲が世界規模になってしまい、好むと好まざるに拘らず世界中の国々が相互に関わりを持たざるを得なくなってしまった以上、そのバランスが破綻・衝突する333