ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

遣の原則である「紛争当事国の同意」を取り付けることなくその活動は拡大されているし、イラク南部に対する飛行禁止措置も同様である。この点について、国連は「深み」にはまっている、との批判も強い。しかし、冷戦後の各地における紛争の多発、停戦合意の破棄と紛争の長期化など現実を座視することはできない。今後、ガリ報告書が現実の紛争を目前にして部分的に安保理決議に採用され、長期的には大きな影響を与えることは十分に予想されるが、当面、集団安全保障センターとして期待される国連は、いまだにPKOなど、冷戦時代に培った伝統的な手法に頼るしかない。そのPKOは、第1章の第九で述べたように、いまだ生成の途上にある。国連憲章の改定を行い、PKOの位置づけを明確にしなければならない。国連常備軍あるいは国連警察軍的なもの、あるいは国連待機部隊や実施部隊の創設には莫大な費用がかかるが、その財源は各国の軍事費を縮減し捻出する。以上述べてきた「安全保障体制」の確立をめざした国連改革を提言する。6.国連改革と日本の安保理「常任理事国」入り日本の安保理「常任理事国」入りが声高に叫ばれている。1992年1月の安保理サミットで宮沢首相は間接的表現で日本の安保理「常任理事国」入りの希望表明を行った。日本の常任理事国入りは「非軍事貢献の常任理事国入り」である。ガリ氏も本年9月に来日して、日本の「非軍事貢献の常任理事国入り」を支持する旨を表明した。国民世論も「非軍事貢献の常任理事国入り」に傾斜している(1994年1月25日実施の外務省世論調査「常任理事国入り」賛成52.9%反対14.8%わからない32.3%)。しかし、私は「非軍事貢献の常任理事国入り」は望めない、と考える。常任理事国になって、「軍事貢献はやらない、できない」では国際世論、諸国民世論は許さない。常任理事国になることは、他の加盟国がたとえ気の進まない作戦であっても、「やれ」と命じる側に立つのであって、命令だけして自分は「やらない」では通じないのではないか。各地の紛争の多発化・激化に伴い、今後、安保理でPKOや多国籍軍派遣の決定がたびたび行われることになる、と予想される。その時に、カネと口だけ出して、血を流すこと318