ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

4.人権の問題狭義の安全保障の範囲を越えるが、国連憲章の大きな特徴として、平和と人権についての不可分性の認識がある。ここには、国内において人権を抑制する政府が同時に、対外的には最大の人権侵害であるところの侵略戦争を引き起こすこと、すなわち人権抑圧国家=平和破壊国であるという歴史の教訓が生きている。国連憲章の人権規定は、第二次大戦の誘因となったナチズム、ファシズム、軍国主義、超国家主義による人権蹂躪の歴史を教訓として差別なき人権の尊重というものを、一国の主権の範囲内で自由に処理できるものではなく、国際秩序のなかに普遍的価値として位置づけることを指向している(憲章第1条、第55条、第56条)。但し、人権の具体的内容や侵害があった場合の措置までは想定していないため、国連の場で具体的な人権の問題が提起されると、それはしばしば国内問題であるとの抵抗を当事国から受けてきた。憲章第2条7項の国内管轄事項への「干渉」を禁じる規定との関係である。このような事情もあって人権の保障にかかわる国連の活動は、国際人権規約・最近では子どもの権利条約や死刑廃止条約などの例にみるように、人権の「保護」より人権の「伸長」のための活動に収斂するものであった。唯一例外はアパルトヘイト問題への対応であった。この問題以後、国連がとりあげる「人権問題」は植民地主義の清算という実践的課題の要素が強まりつつあるのは好ましい傾向といえる。人権に関して国連がかかえる今後の課題は、人権の「伸長」と同時に人権の「保護」の姿勢-人権侵害国に対しては経済制裁を行うなど-を強く打ち出すことが求められる。いままでは、友好関係に必要な条件を創造するために人権尊重の促進が求められたが、今後は人権のために平和が求められるべきである。人権としての平和=平和的生存権が確立されるべきである。本来の人権問題については、1948年に国連総会が採択した世界人権宣言の具体的フォローアップとして起草され採択された一連の人権条約(国際人権規約など)の実施に関す30