ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

権が発動されることは稀で実質的には米英仏でほとんど決めてしまう。その中でもアメリカの発言力は強く、アメリカは自らの考えを国連の意思として実現する条件が確立されたといえる。ここには、極限すれば、「アメリカ一極主義」の安保理の実態がある。さらに、安保理は、多国籍軍体制=旧連合国体制=核保有体制=冷戦遺制である。票数の関係からいっても、五常任理事国が賛成した場合、非常任理事国10ヵ国のうちの4ヵ国が賛成すれば、決議は成立する。つまり、中小国の5分の2の賛成(必ずしも国際世論の多数とはいえない)によって、国際社会としての意思決定が可能である。これに対して、もし、中小国が安保理でその意思を通そうとすると、五常任理事国のすべてが最低限反対しないことが確保されないといけないことになる。大国間の協議が進めば進むほど、大国の横暴に対して中小国の正当な権利を保全することは、普遍的な国際機構としての国連が最も重視しなければならない問題である。これは、国際社会の民主化、国際民主主義の実現という問題に直結するものである。以上みてきた安保理の実態から考えて、第2章の1で指摘した前提での国連の改革が求められる。即ち、安保理に日本やドイツなどの大国を常任事理国として加え、現行体制を強化するだけの改革ではなく、国際社会の民主化・国際民主主義の実現を視野に入れた新しい観点での改革が求められている。その改革の基本理念は次の三つである。第一は、経済力も含め力のある先進国だけを常任理事国にして、「効率」重視の安保理運営をするのではなく、国連の理念である「ユニバーサリティ」(万国平等主義)を考慮し、地域性を加味して開発途上国をメンバーに加える。第二は、政府間機関である国連を個人に直接結びつけNGOなどを安保理及び総会にも参加させる。第三は、準常任理事国の設置である。これは、昨秋の第48回国連総会で安保理の抜本的改革を論議する場として設置された「作業部会」の議論の中で提起されたものである。作業部会では、日、独の常任理事国入りや準常任理事国の設置など多くの意見が「公式の場」で論議された。314