ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第11回佳作所に出来ていると見て間違いなかろう。これはまさに条約をその目的に沿って解釈したものといえる。条約を目的に沿って解釈することには恣意に流れる危険性が一般には指摘され、当事者の意図したものを明らかにすることによって解釈すべきだとの主張もなされる。しかし、普通の二国間条約や小規模の解放型多国間条約と異なり、国連憲章は歴史上初めての大規模な解放型多国間条約である。現在の加盟国は原加盟国数の三倍を超える184カ国(1994年1月現在)にのぼっている。そのため少なくとも原加盟国以外の加盟国は、設立当時の大国の本音についての黙示の合意を推定されて、意味が明確でない規定についての目的論的解釈への主張を押しとどめられることはない。憲章は国連の生きた憲法なのである。湾岸戦争当時ブッシュ大統領は「これで創始者の意図した国連の本来の姿が再び立ち現れる」と熱っぽく語ったそうであるがそうではない。国連は生まれ変わるのである20。○おわりに以上のように改革を進めることに多かれ少なかれ抵抗を感じる大国はあるだろう。しかし、政治における正当性が黙殺しえないものであり、またそれが法とモラルの意識に依拠するものである以上、改革に対して真っ向から対立することはもはや不可能であろう。単に感情的な抵抗は出るであろうが、それは国際世論にかなうものではないし、最も厄介なアメリカは国益のために利用しようと近づいたが為に今さら駄々をこねることは出来ない。逆に言うと、アメリカが国益の追求に国連が資すると思っているうちに改革のためのバーゲニングをしていかねばならないのである。今期の国連総会がお茶を濁すような議論に終始しないことを願う。20モーリス・ベルトランの有名な著作では「再生」とあるが、あえてそうではなく「新生」と言いたい。273