ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第11回佳作しかし、常任理事国は分けて考えねばならないと考える。正当性が生まれるためには共通の価値観や共同体意識が必要であり、それを高めるためには参加の要素が重要である16が、安保理常任理事国のサークルというのは極めて現実的で泥臭い政治の場である。このメンバーになるのにさまざまな指標を組み合わせた客観的資格基準による必要はないと考える。加盟180数国とはいえ、極小国を除いただけでも残りの主要国と呼べる国の数はかなり少なくなる。そのなかで、あたかも学校のクラス委員を選ぶように、常任理事国は選ばれるべきである。ただ頭が良いからというのでもなく、図体がでかいからというのでもなく、総合的に信望を集めたものが指名を受けるのである。そのようにして構成された安保理での採決方式はどうするのがよいか。拒否権をすでに持っている国にそれを手放せといってもそれは難しいだろう。しかし、不可能ではないと考える。自国の行動の隠れ蓑にするつもりで国連に摺りよってきた大国が、完全にではないにしろそこから離れられなくなっている現状からすると、拒否権を徹底的に非難する一方で、現実の力関係に十分配慮した加重投票・特定多数決を提案し、譲歩を引き出すことができるのではないだろうか。ただ、具体的にどの国に何票割り当てるのかは大変難しい問題であり、私自身の案としてもまだまとまらない。ただ、EUの経験17を参考に、国連安保理でもうまくバランスのとれるポイントはどこかにあると信じる。次に憲章の解釈によって実行することが可能なものについて。ICJの自律的判断憲章の成立過程におけるベルギー修正案をめぐる動きに明らかであったように、当初のICJは安保理に対して否定的判断をすべからざるものとされていた。憲章92条はICJにthe last wordを当然に与えることを避けつつ、1、2条で掲げた目的・原則を尊重した外見を備えるために言葉を選んで作られたものだが、このアンビバレントな性格を逆手にとってICJはその権限を強化することができるし、また現にその方向に進んできている。それを示す判決はいくつかあるが、「アメリカにおけるMarbury vs. Madisonのケースに匹敵する」18と言われる1992年のICJ判決19を紹介する。16 Ernst B. Haas, When Knowledge Is Power(1990), p. 9217 EUの閣僚理事会においては大変うまく票の配分がなされている。ローマ条約第148条参照。18 Franck, Supra note 119 ICJ Report 1993参照。271