ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

しかし、正当性とは何なのか。確かに一連の国連の機能を説明するとすれば、国家の行動に正当性を付与する、という表現になるような気がするが、何か化かされたようですっきりしない。「正当性」の意味するところについて検討が必要であると考えるのである。第1節legitimacyとlegalityLegitimacyは一般に日本語で正当性と訳されるものだが、辞書を引いてみると正当性という訳と同時に合法性という訳が出ている。しかし、合法性を英訳するとlegalityであってlegitimacyではない。legalityとlegitimacyという二つの単語をそれぞれ和訳せよといわれたら当然訳し分けるであろうが、legitimacyと聞いた時、そこに法的なイメージを過剰にダブらせていはしないだろうか。legalityは、確固として存在する法に合致していることを意味し、法によって明確に定められた範囲からの逸脱は認められない。legitimacyは一定の条件の下で、legalityのような厳しい限定から逃れている。(英語の文献を見るとこれらは厳密に使い分けられている。)第2節legitimacyの要件国際政治においてlegitimacyが云々されるということはそこにシステムとしてルールが存在するということが広く認識されていることを示すものである。そしてこのシステムは、「国際社会という共同体が有効と認めるような‘義務’を作り出すことによって自発的な追従を引き出す、相互主義に基づくダイナミクス」7の存在に支えられている。つまり、共同体としての国際社会において従わねばならないという心理的プレッシャーが生じているという事実が、正当なルールのシステムの背景にあるのであり、ここにいうプレッシャーは一時的な強制ではなく一貫したシステムへの支持が生み出すものである。一貫したシステムへの支持の前提としては意思決定に関し民主的なプロセスが確保されていなければならない。現代国際社会で民主的なるものが第一義的なものと考えられていることは疑いなく、国連においては特にそうである。なぜなら、正当性をめぐる問題の歴史のなかでそれを描き出すための鍵となってきたのはlawとmoralityである8が、前者のlawが完全でない分、国際社会では後者のmoralityが相対的に重要な価値基準になるのであり、国連2667 Thomas M. Franck, The Power of Legitimacy Among Nations(1990), p. 185-87, 198.8 Inis Claude, Supra note 4, p. 79.