ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
265/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている265ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

第11回佳作討し、それをもとに国連をどう変えて行くべきかを考える。第1章国連は今どこに常識的なことであるが、国連は世界政府ではない。19世紀イギリスの法学者JohnAustinはlawを“the enforced command of a sovereign to subject”と定義したことは有名であるが、そこにいう主張が無い以上国際社会に彼の言う意味での法は無い。諸国は基本的にはその意思のもとに締結された条約や慣習法にのみ、拘束されるのであり、主権の侵害は許されない。しかし、現実にはオースティンの言う意味での法とは呼べないまでも様々な分野に及ぶルールができ上がっており、また進行中である。国連総会に付属する国際法委員会によってまとめられ、総会で採択されたものにも、国連の枠を超えた普遍的なルールが多い。(これからの世界で法は無いと開き直るのと、ルールの一元化を目指して進むのと、どちらが現に指向され、また好ましくもあるかは明白である。)国連にはそうした国際的ルールのシステムの大黒柱的な面がある。総会決議の国際的影響力、国際司法裁判所の事実上の先例拘束力、ILC起草条約の慣習法宣言効果・一般法形成機能を見ればそのことが分かる。しかし、国連には国際政治のダイナミズムの集結という面もあり、それは上のような側面を現実隠蔽のために利用しつつ、より正確に言うと後者が前者に昇華してきたような幻想を創出しつつ、今も生き続けているが、それが最も顕著な機関が安保理である。国連憲章は、24条において「国連の迅速かつ有効な行動を確保する」ことを安保理設置の目的であると示すのみであるにもかかわらず、総会の優越も国際司法裁判所の優越も許さず、しかも純粋な代表とは言えない理事国構成と、その一部への拒否権保持を認めているのである。また、設立時の大国の意図は国連憲章の準備手続きといえるものからも読み取れる。263