ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第9回最優秀賞た。例えば、中国は、50年代の末から、すでにソ連とは異なった社会主義体制、外交路線を歩んできた。北朝鮮も、「チュチュ思想」に基づく独自の社会主義体制づくりを目指してきた。ASEAN(東南アジア諸国連合)にしても、米ソのいずれかの地域的集団安全保障体制となって発展をみてきたわけではない。アジアの「冷戦の構造」は、一方で米ソの国際関係に大きく影響されながら、他方でアジアの国々独自のダイナミズムを政治文化や思想の面でかかえることによって、両者の均衡を図ることが困難な「矛盾の体系」でもあった。それは、外からの「介入」と内からの「自立」との緊張の構造でもあった。アジア新時代は、これまでの国際システムの危うさ(「矛盾の体系」)を脱却して、自らの考え方と行動の下に新しい国際秩序を創造していける機会を持つこととなった。第二は、ポスト冷戦期におけるアジア諸国の軍備増強――いわゆる「力の空白」と「潜在的紛争地域」の問題である。南シナ海の南沙諸島の領有権をめぐり中国とベトナムの関係が緊張している。このあたりは周辺諸国の利害が交錯し、東南アジアの「潜在的紛争地域」と呼ばれてきた。ASEANのほとんどの国で、92年度の国防予算は昨年に比べて2ケタ増を記録したという。アジアの武器輸入も、91年に世界の34%を占め、中東に代わり通常兵器の最大の市場になったといわれる。背景にあるのは、ASEAN諸国が安定の前提条件と考えてきた米軍の縮小によって、この地域に「力の空白」が生まれるのではないかという不安である。海軍力の増強につとめる中国に対してASEAN各国は新たな覇権主義として警戒感を強めている。第三は、アジア新時代について考える時、重要なことはアジアの新国際秩序の具体的な構想や政策が見えてこないことである。それはなぜなのか。その理由は、何よりもアジアではヨーロッパのCSCE(全欧安保協力会議)のような「国際安全保障体制」づくりの試みがなされてこなかったことにある。ヨーロッパでは、経済・人権・安全保障を35ヵ国で広範に討議する外交のフォーラムがある。21