ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第11回最優秀賞行動主体の行動を拘束させるのであれば、国連大学こそが、司法作用の(1)のレベルで積極的な役割を担うことができると考えている。具体的には、国家や多国籍企業や非政府組織等のアクターが、国際的な取り決めやレジーム(規範、規則)に違反していないかの客観的な情報・データを、国連大学は分析・評価し、国連大学の責任のもとに、各監査・モニタリング機関や国際司法裁判所にその情報を提供するのである。そして、国連大学によって提供されたデータ・情報31を基に、各監査機関は各行動主体に勧告したり、国際司法裁判所に提訴できるようなシステムを構築するのである。ただし、各監査機関やICJは、それらの情報に拘束されるのではなく、あくまでその情報を判断に使うか否かは、各監査機関・ICJの裁量事項にしなければならない。このように、国連大学自体が監査・モニタリング機関になるわけではないが、各監査・モニタリング機関やICJの機能を背後から支える、という役目を演じることが出来るのである。3-4.「世界公共政策センター」としての役割第四番目に、国連大学が「世界公共政策センター(The Institute of the Global PublicPolicy)」としての役割を担うことを提案する。「グローバル・ガバナンス」による「共通安全保障」実現の第四番目の制約要因は、(1)学問の過度の細分化現象のために、各種問題に対する分析・研究が不十分であり、当該問題の「部分解」しか求めることが出来ないということと、(2)純粋な学問的研究のみに埋没しがちになり、政策指向(policy-oriented)、問題指向型研究が少ない、という事実である。今までも、学際的研究は無かったわけではないが、その専門性が失われてしまうケースが多かった。これから必要なのは、専門性を決して下げることなく、様々な学問分野の英知を総合した、政策指向の研究であると考える。国連大学は、そのような新しい研究をするのに、最も適した世界的機関であることは論を持たないであろう。例えば、ここでは、環境と経済という点を例にとり、政策指向型の総合的研究の必要性を説明してみることとする。30この点に関し、司法の独立性を侵すのではないか、という危惧の声がたまに聞かれるが、(1)事実調査と(2)法規範の適用と二つのレベルをきちんと区別し、行政機関が(2)のレベルに全く関与しないことが保証されれば、私は全く問題ないと考えている。31もちろん、国連大学が、唯一の情報提供者ではない。225