ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

決定者達を説得させることも不可能であるからである。こうすることにより、国連大学は、国際的な「世論攻勢」をかけ、国際機関、政府、NGO、マス・メディア、産業会、学会等の多様なアクターの関心(Concern)を高める努力をする必要があるのである。さらに、国連大学の各種研究所と各国の政府や政党、企業との関係を密にすることが重要である。現在の意思決定者達に「共通安全保障」を認知させる機会を多く設け、外部の情報・研究機関との関係を密接にすることにより、現在の政策担当者・政治家の情報収集・分析・発信能力の欠如を補おうとするのがその趣旨である。3-2.「人材育成・活用機関」としての役割第二番目の国連大学の役割は「人材育成・活用機関(The Institute of HumanResource Management)」である。「グローバル・ガバナンス」による「共通安全保障」実現を制約している二番目の要因は、人材不足ならびに人材活用の不徹底である。人材面における制約要因を考察する際、重要なのは、(1)人材が絶対的に不足しているという面と、(2)人材は存在するが、それを十分に活用しきれていない、という2つの面に分けることである。そして、私の理解するところによれば、(1)の面もさることながら、(2)の面の方がより深刻である、ということである。例えば、これは日本の事例であるが、次のような事実はあまり深刻に認識されていない。これまでの日本の国際機関に対する取り組みは、行政官庁の一部局がタテ割りで所轄するという方式がとられてきた。ここから政府代表として送られる人材も完全に官庁の人事ローテーションに組み入れられている。このような閉ざされた国際機関対策の中で、これらの機関で働く日本人の「純粋な職員」23は、十分なインセンティブが与えられず、その数は著しく少ないのである。私は、このような人材活用不徹底という深刻な事態を是正するためにも、国連大学が次にあげる三つの措置を採ることを強く提言する。第一に、既に述べた「学会・政策研究会(Epistemic Community)」という一種の非政22223ここでいう「純粋な職員」とは官庁からの出向者ではなく、自ら欧米の大学等で博士号を取得し、独立の専門家・プロフェッショナルとして国際機関に務める職員を指す。