ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

り出すこと、そして四つ目は、代替案の選択のための基準についての合意を図ることである19。つまり、知的な費用・便益計算が必要なのであり、そのためには各分野のエキスパートの知性を総動員せねばならないのである。まとめると、前述の多用なアクターが、前述の世界秩序の形成・変革の3つのレベルに、能動的に関与しながら、様々なアクターに対する軍事的かつ非軍事的「脅威」を最小限に食い止めるのが、「グローバル・ガバナンス」なのである。以上、私は、近年の世界変動を振り返りながら、世界の「安全(security)」と「統治(governance)」の中身が大きく変容してきた、という事実を述べた。そして、この2つの事実こそが、国連大学設立当時から現在に至る20年間で起きた世界の地殻変動の中身であると、私は解釈している。そして、「共通安全保障」「グローバル・ガバナンス」という二つの理念を提示させて頂き、この二つの理念の間には、目的・手段の関係が存在することも指摘した。3新時代における国連大学の4つの役割以上述べてきた世界変動の本質を念頭におきつつ、来たる世紀における国連大学が果たすべき役割は一体何であろうか。世界は、国連大学にいかなる役割を担うことを期待しているのであろうか。一言で言えば、それは前述した「共通安全保障」「グローバル・ガバナンス」という不可分の二つの理念を実現するための触媒(catalyst)としての役割を担うことである。従来の常識からすれば、「大学」が安全保障や世界統治に関わるなどということなど考えられないことであったかもしれない。しかし、この「考えられないこと」を私は、これから真剣に議論したいと思っている。以下、国連大学の役割を、4つの視点から議論していくこととする20。3-1.「情報収集・分析・発信センター」としての役割第一に、私は、国連大学が「情報収集・分析・発信センター(The Institute of22019交渉に関する議論は、Roger Fisher and William Ury, "GETTING TO YES: Negotiating Agreement Without GivingIn", Penguin, 1991を参考にした。20これら4つの国連大学の役割は、相互にインターリンクトしており、全く独立しているわけではない。