ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第11回最優秀賞方、第二のレベルは、意思決定者を含む日常的な人間行動パターン、そして第三のレベルは、外交交渉・国際会議等を通じたレジームの形成・変化である。これらは、互いに相互浸透しており、従来のような国家対国家の交渉という単純な図式では、世界秩序の形成・変革を最早捉えることは出来ないのである。では、「政府によらない統治」の実質的担い手となるのは、いかなるアクターであろうか。私は、大きく分けて次の四つに分けるのが適当であると考える。第一に自治体、第二に非政府・営利組織(NGOs)、第三に国際機関(IGOs)、そして第四に多国籍企業(MNCs)である。さらに、非政府・営利組織は、(1)学会・政策研究会(Epistemic Community)15、(2)平和・人権・環境・市民運動団体(Advocacy NGOs)、そして(3)開発NGOs(ActionNGOs)の三つに大きく分類できるであろう。これらの個々について深く分析・議論する紙面の余裕はないが、本稿のテーマとの関係で言えば、非政府・営利組織の一分類である「学会・政策研究会」の果たす(べき)役割について簡単に触れたい。現在の国際関係16は、前出の様々なアクターが、ダイナミックにインタラクトしながらそれぞれの利益極大化を図っている舞台であるが、そこで行なわれるゲームは、従来の国家関係における純粋な「囚人のジレンマ」ゲーム17ではなくなってきているのである。昔と異なり現在は、各プレイヤー間のコミュニケーション、交渉、会議というものを伴ったゲームであり、そのゲームも一回限りということはほとんどなくなってきている。近年、開催される国際会議の数が爆発的に増加しているという事実は、その現れと言えよう。例えば、1838年から1860年にかけて開催された国際会議の数は年2、3回程度であったのが、1900年から1910年になるとその数は年100回となり、1970年から1979年になるとその数は何と年3000回程にまで増加しているのである18。これからの国際関係では「交渉」というものの重要性が増していくのであり、そこに「学会・政策研究会」の必要性が出て来るのである。なぜなら、交渉を上手にマネジメントするには、次の四つが大事だからである。一つ目は、人柄を「問題」から切り離し、問題解決に専念すること、二つ目は、立場ではなく「利害」に焦点を当てること、三つ目は、問題解決に至る様々な代替案を作15「知的共同体」と言う方が正しいかもしれないが、実態は研究会なのでこう呼ぶことにする。16「国家」以外の多様なアクターを考慮する私の立場によれば、「国」際関係、というのは適切ではないが、他に適切な言葉が見当たらないのであえて従来の慣習に従い「国際関係」という言葉を使わせて頂いた。17相互背信を合理的行動規範とするパワーゲームを言う。このゲームでは、約束や協定を結んでも、それが守られる保証は全くない。18(出所)Ithiel de Sola Pool,“Technologies without Boundaries”, Cambridge, MA: Harvard University Press, 1990.219