ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第11回最優秀賞しての地域・地球的生態系の維持」10と定義している。私は、このBuzanの「環境安全保障」の定義を基に、冷戦が終結し、「地球的問題群」なるものが再重要課題として浮上してきた現在において、従来の「国家安全保障(National Security)」という概念を越えて、地球環境破壊、テロ活動、麻薬取引、資源枯渇、人口問題等という軍事以外の「脅威」を加味して捉えた「共通安全保障(Common Security)」という概念を、新たな行動理念にすることを提案したい11。「共通安全保障」は、「共通の脅威」と「共通の利益」という新たな概念に着目し、国家の領土保全、経済的繁栄さらにその他の国家以外のアクターに対する「非軍事的脅威」が増加しつつある、という仮定に基づいている。それぞれの国家の利益のみを便益費用計算にいれるのでなく、諸国家の「共通利益」(前述)をも計算に入れた安全保障概念を構築していくのである。国連憲章第一条は、「国際の平和及び安全を維持すること」12を国際連合の目的としている。国連大学も国際連合の下部機関であるから、国連大学の究極の目的も「国際の平和及び安全」の維持でなければならない。そして、ここで重要なことは、先に述べてきたように、この「安全」の中身が近年変化してきている、という事実なのである。この国連憲章中の「安全」の中身の変容という事実を無視して、国連大学の役割を論ずることは不可能である。2-2.「統治」の中身の変容-「グローバル・ガバナンス」前節で、国際連合(よって、国連大学)の目的たる「国際の平和及び安全」の中身が変容しているという事実を指摘し、国連大学の役割も、従来型の「国際の安全」の解釈ではなく、国家以外のアクターと軍事力以外の脅威を加味して「国際の安全」を捉える「共通安全保障」を究極の目的として考察されなければならないことを説いた。ではこの「共通安全保障」という意味における「国際の平和と安全」を維持・確保していくには、いかなる方法により、世界を統治(Govern)していけばいいのだろうか。まず、国際社会を国家と国家との対抗関係という枠組のみで捉える従来の安全保障観(国家安全保障)による「統治」のあり方を簡単に考えてみよう。従来の安全保障観によれば、10 Bary Buzan,“New Pattern of Global Security in the 21st century”, International Affaires 1991;原文は、英文であるが、筆者が訳した。11最近、外国の文献で「common security」という言葉が散見されるようになっている。日本では、「共通の安全保障」と翻訳されている。私が本稿で提示した「Common security」という概念と、今まで使われてきた「commonsecurity」を区別するために、「共通安全保障」と言わせて頂いた。12「岩波コンパクト六法」平成5年度版、岩波書店から引用。217