ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第9回最優秀賞2.各論(1)ポスト冷戦期の地域紛争米ソ対立を基盤とする旧来の世界秩序は、ある意味では安定したものだった。ヨーロッパにおける民族問題も、ソ連が東ヨーロッパ地域における影響力をもっていたために抑え込まれ、表面化することはなかった。冷戦期には、米ソ両超大国が地域紛争を東西対立の枠組みで理解しようとしたり、東西対立における自己の立場を有利にするために利用しようとする傾向が強かった。また、地域紛争当事国も、超大国のいずれか(時には双方)を利用しようとしがちであった。したがって冷戦期の方が、地域紛争が東西対立と結びつきエスカレートする危険が高く、ポスト冷戦期に入った現在では地域紛争の局地化がより容易となっている。地域紛争を引き起こす要因には、人種・宗教・国境・経済的利益その他さまざまなものがあり、しかもそれらの多くは、東西対立と直接的に結びついているものではない。したがって、地域紛争は冷戦期にも各地で発生したし、ポスト冷戦期に入っても容易にはなくならないであろう。冷戦期には、両超大国の陣営内秩序維持能力が高かったので地域紛争の抑制・局地化が容易であったが、超大国のそのような能力が衰退したポスト冷戦期には、地域紛争が多発し深刻化することが予想される。現在、日本が解決を迫られている「従軍慰安婦問題」が近年急浮上してきたのもポスト冷戦期と深く関係しているとみることができる。(2)ポスト冷戦期と「アメリカ一極主義」1990年代に入り、世界では三つの大規模な国際環境の変化が進行中である。第一に、東西の対立はほぼなくなり、東西双方の大幅な軍備削減が可能となった。第二に、防衛問題の重要性は急激に低下して、代わって、経済問題が極めて重要な国際的課題として捉えるようになった。このような国際環境の下では、国家の国際社会における地位は、その国の軍事力よりも経済力により決定されるようになり、冷戦期の超大国である米国・ソ連(ロ19